いまでも根強い人気 名車「180SX」は何がよかったのか

後期ではエクステリアが一新

 1996年8月のマイナーチェンジではエクステリアの大変更が行われている。フロントバンパーとリアバンパーの形状が更新され、リアコンビネーションランプが丸型4灯風になり、大きなリアウィングが搭載された。ホイールも更新し、スカイラインと共通のデザインとなった。また、廉価グレード用に、NAのSR20DE(最高出力は140psと控えめ)が追加されている。

1996年以降の後期型180SX。フロントバンパー形状やウィンカーとフォグの位置が更新されている
1996年以降の後期型180SX。フロントバンパー形状やウィンカーとフォグの位置が更新されている
リア周りも大変更。丸目4灯風のテールランプと、巨大なリアウィングが特徴
リア周りも大変更。丸目4灯風のテールランプと、巨大なリアウィングが特徴
前期型(1989年)のインテリア
前期型(1989年)のインテリア
後期型(1996年)のインテリア。前期型とは、エアバッグ搭載されたステアリングホイールや、エアコンの操作盤が異なる
後期型(1996年)のインテリア。前期型とは、エアバッグ搭載されたステアリングホイールや、エアコンの操作盤が異なる
前期型の前席シート
前期型の前席シート
後期型の前席シート。ヘッドレスト一体型から通常のヘッドレスト分離タイプへと変更されている
後期型の前席シート。ヘッドレスト一体型から通常のヘッドレスト分離タイプへと変更されている

憧れのスポーツカーを手軽に楽しめた

 S13型シルビアと180SX、どちらもシャシーは共通で、デザイン違いという関係ではあったが、シルビアの方はオシャレに乗りこなすデートカーとしてもヒットしていたのに対し、180SXの方は、もっと「硬派な走り」に憧れた者に好まれるデザインであった。そのため、現存する180SXのほとんどが、必ずと言ってよいほど、手を加えられている。

 180SXは、ターボエンジンと5速MT、そして5ナンバーサイズというスペックに加えて、リトラクタブルヘッドライトやリアハッチバックのデザインが、どことなくフェラーリにも似たスタイリッシュさがあり、それらが当時の若者から支持された大きな理由であろう。

 当時の新車価格は約200万 ~ 250万円。決して安くはないが、頑張れば20代で買えない価格ではなかったし、数年落ちの中古車なら100万円代のタマがあった。

衝突安全性への規制が厳しくなかった時代だったからこそ、ここまで低いノーズにすることができていた
衝突安全性への規制が厳しくなかった時代だったからこそ、ここまで低いノーズにすることができていた

 最終的には、1998年12月にS15型シルビアに統合される形で生産終了となった、180SX。180SXに限ったことではないが、この当時のFRスポーツカーには、乗り込んだ時の視界の低さや、手が届くところにタイヤがあるような感覚など、最近のクルマではほぼ味わうことができないものがあった。

 筆者が日産に入社して間もない新人のころ、会社の運転訓練の一環として、ロールゲージが組まれた180SXとP11プリメーラでのジムカーナ走行訓練があったが、あのときの運転の楽しさは、いまだに残っている。プアなタイヤならではの操る難しさは、まさにスポーツカーの醍醐味だった。こう考えると、あの時代を知らない若者がクルマから離れていくのは、仕方のないことなのかもしれない。

 筆者の知人にも、180SXをチューニングして乗っていた人が多くいて、タイヤホイールのインチアップと車高調の交換は大前提として、エアロパーツ装着やエンジンチューニングまで施された180SXが、日産の社宅の駐車場にゴロゴロしていた。

 というのも、当時の日産車の純正足は、バウンドストロークを確保するために、タイヤ上端からフェンダーまでの隙間が広く、車高も上がっていて腰高感があり、ダサかったのだ。しかしこれらを自分好みに仕立てていくのも、180SXの楽しさでもあった。

◆      ◆     ◆

 もうこのようなモデルが、市販されることはないと思うと、当時を知るものとしては、残念で寂しい思いだ。将来的にクルマをどう楽しむか、クルマを楽しむ文化をどう伝えていくかは考えなければいかないことではあるが、いまならばまだ乗ることができる。あのころのあのモデルが欲しい、と思っている方は、いまのうちだ。

【画像ギャラリー】90年代のFRスポーツカー黄金期の名車!! 「180SX」を写真で詳しく

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