派生型SUVとして、やってはいけない過ちを犯した
通常、ベースの車両をSUVタイプにすると、ベース車よりも価格はアップする。それは、SUVらしさを表現するためのアイテムが増えるためだ。力強さを表す大径タイヤや、SUVらしく見せる専用バンパー(スキッドプレート付など)、フェンダーモールの追加、ルーフモールの追加、アイポイントを上げるために前席シート高をかさ上げする、などだ。
ただ、インテリアの変更は最小限に抑え(コストアップしない)、ベース車のアイテムを極力利用。もちろん化粧直しはなされているが、別世界のモノをつくろうとはしない。
しかしながら、スカイラインクロスオーバーの場合、インテリアの素材にもこだわって、プレミアムを強調した路線へと色気を出してしまった。レッドレザーのステッチ多めのインテリアなどがそうだ。またプロポーションを修正するために、ホイールベースを短縮化したりもした(セダンは2850mmのところ2800mmに修正)。
そこまでしたのには、当時好調であった北米インフィニティの「イケイケラグジュアリー路線」が影響していたと考えられる。その結果、スカイラインクロスオーバーは、ベース車のスカイラインとの価格差が、約50万円(セダン370タイプS 369万円)にもなってしまった。
ちなみに、いま絶賛大ヒット中のトヨタ「ヤリスクロス」は24万円差(ガソリンZ-2WD 税込221万円、ヤリスガソリンZ-2WDは税込197万円)、先日日本に登場し話題沸騰中のトヨタ「カローラクロス」は、約20万円差(カローラツーリングガソリンS-2WD 221万円、カローラクロスS-2WD 240万円)。
「派生型SUV」としては、購入する顧客のターゲット層が変わらない価格差に抑えなければ、ヒットさせることは難しい。スカイラインクロスオーバーは、高額であったことに加えて、スカイラインクラスを購入検討する顧客のターゲット層が、ちょっと頑張れば手が届く価格差におさまっていなかったことも、人気が振るわなかった要因であろう。
ぜひ「GT-RのSUV」を!!
SUVが全盛のいま、ぜひ日産に実現してほしい派生SUVがある。それは「GT-R」のSUVだ。
かつて、インフィニティの「FX45(S50型:2003年~)」が、「GT-RのSUV版」と呼ばれていたことを覚えている方もいるだろう。当時の高級SUV、BMW X5やポルシェカイエン、メルセデスMLなどは、どれも背が高く、オフロード走行にも対応したボディスタイルであったのに対し、FXはオンロード走行を主体とし、「バイオニックチーター」というキャッチコピーの通り、ダイナミックで存在感のあるエクステリアで登場した。
特に、ライバルSUVを唸らせたのが、そのハンドリング性能だ。FX45のエンジンは324ps/454Nmを発揮する4.5LのV8 NAエンジン、FR-LプラットフォームはV35型スカイラインと共用で、後輪駆動ベースの4WD。スモールキャビンに大径19インチタイヤを装着し、4WDシステムはR34スカイラインGT-Rにも搭載された、ATESSA E-TSを搭載。乗り心地はガチガチであったが、「SUVのGT-R」と呼ばれるにふさわしいハンドリングであったそうだ。
ランボルギーニがウルスを、マセラッティがレヴァンテを、ポルシェがカイエンを、アルファロメオがステルヴィオを、ジャガーがF-PACEを出している時代だ。イメージリーダーとして、初代FXをオマージュするスーパーSUVを、R35 GT-Rをベースにつくってみてはどうだろうか。
かつては10車種以上もラインアップしていた北米インフィニティも、今では6車種のみと、寂しい限りだ。新車を次々と投入し、いま勢いのある日産だが、このようなファンを熱くさせる「遊び心」も見せてほしい、と思う。
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