■FJクルーザーが生産終了となった「根本的な」理由
その本格的なオフローダーとしての資質に加え、「非常にしゃれたデザインの粋なSUV」として一部で人気を博していたトヨタ FJクルーザーが、2代目へと進化することなく生産終了となった理由。
それは、ひとつひとつ言えば「全幅1905mmは、さすがに日本の道ではデカすぎた」「JC08モードでも8.0km/Lしか走らない4Lガソリンエンジンは、燃料代的に正直キツかった」「ドアミラーが自動開閉式ではない」「その他の装備も、車両価格の割に正直ショボい」といったあたりになるのでしょう。
それらはいちいちそのとおりでごもっともなのですが、筆者としてはもう少し根本的な理由が、FJクルーザーを廃番へ追い込んだのではないかと見ています。
北米市場のことはわかりませんが、少なくとも日本市場でトヨタ FJクルーザーが廃番となり、2代目が出なかった理由は「日本人が全般的に貧乏になったから」なのでしょう。
人間というのは、お金がたくさんあれば1905mmの全幅はあまり気になりません。燃費の悪さも、装備のショボさ(シンプルさ)も気になりません。いや「気にならない」ということもないのですが、「ま、いいか」とも思えるのです。
特にそれがFJクルーザーのようにスーパーおしゃれなデザインとたたずまいを有していれば、そのおしゃれっぷりと“粋”に免じて許すことができるのです。
しかしお金に余裕がなくなってくると、人間は途端に現実的になり、非合理的なもの=無駄の存在が許せなくなってきます。それを持つことを不安に感じ始めます。
いくらFJクルーザーのデザインとたたずまいが超絶素晴らしかったとしても、「でも車幅が広すぎて、乗る機会がないしなぁ……」とか、「でも燃料代がちょっとアレだからなぁ……」といったセコい(?)思考になってくるのです。
もちろんその思考(現実的な懸念)はお金がたくさんあったときから頭のどこかにはあるわけですが、貧乏になると、その懸念が脳内でメキメキと顕在化し、「こんな役に立たない車、買うべきじゃないよな……」という結論に達するのです。
経済協力開発機構(OECD)によれば、この30年で米国の平均賃金は47.4%増え、英国も44.2%増で、ドイツでも平均賃金は33.7%増加しています。
それに対して日本はこの30年間で4.4%しか増えない体たらくであったことが、トヨタ FJクルーザーという「粋だけど、いろいろな手間とお金がかかるSUV」を殺したのではないかと、筆者は見ているのです。
■トヨタ FJクルーザー主要諸元
・全長×全幅×全高:4635mm×1905mm×1840mm
・ホイールベース:2690mm
・車重:1940kg
・エンジン:V型6気筒DOHC、3955cc
・最高出力:276ps/5600rpm
・最大トルク:38.8kgm/4400rpm
・燃費:8.0km/L(JC08モード)
・価格:334万2857円(2014年式 カラーパッケージ)
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