なぜ増えない? 便利なのに…左右非対称のクルマの利点となるほど厳しい重荷

ピラーレスでも側突試験で最高ランク

 スライドドアを装備すると、スライドドア部の開口部が大きくなるため、側突(側面衝突)に対しての強度が十分ではなくなりますが、周辺構造やドアを補強することで、しっかり安全性を確保しています。前述したように、重量は増えコストもアップしますが、スライドドア車だからといって、側突安全性が劣るということはありません。

 また、タントやN-VANのようなピラーレスのスライドドアであっても、しっかりと対策がなされています。タントでは、ピラーレス構造ながら、ドアにハイテン材(超高張力鋼板)を使ったピラーを内蔵し、さらにドアロック数を増やすなどして、車体剛性と衝突安全性を向上。

 その結果、タントはNASVA(自動車事故対策機構)の側突試験で、最高ランクのレベル5を獲得し、ピラーレスでも衝突安全性に問題ないことが実証されています。

 ちなみに側突試験とは、試験車のピラーレス側に90度方向から1.3トンの台車を時速55km/hで衝突させて、助手席のダミー(人形)の被害状況から乗員保護性能を評価する方法のこと。この試験で「問題ない」とされているわけですから、タントが、少なくとも側突に弱いということはないとお分かりいただけると思います。

通常の側突試験は、運転者側に衝突させて運転者の衝撃を判定するが、タントの場合は、ピラーレス側から台車を側突させて助手席での被害状況を評価
通常の側突試験は、運転者側に衝突させて運転者の衝撃を判定するが、タントの場合は、ピラーレス側から台車を側突させて助手席での被害状況を評価

ピラーレス車が少ない理由は「燃費悪化」や「コスト」の問題

 利便性が高く、解放感にも優れているピラーレス構造は、タントにとって大きなアピールポイントですが、最近の軽自動車の人気ランキングでは、両側スライドドアのホンダ「N-BOX」とスズキ「スペーシア」の後塵を拝しており、また、その他のクルマでも、意外と採用は広がっていません。強度が十分であるならば、もっと広く採用されてもいい気がしますが、過去に採用していたクルマも、モデルチェンジで消えています。

 採用が進まない理由としては、剛性や強度アップのための開発負担増やコスト高、また重量増加による燃費悪化などが挙げられます。またユーザーの立場からは、いくら「問題ない」とされていても、非対称であることや開口部が大きいことで不安になってしまう、といった人間の心理も、ピラーレス採用のマイナス要因に働いているかもしれません。

トヨタのポルテは、運転席側はヒンジドア、助手席側は大型の電動スライドドアの非対称車。人気となったが、2020年に生産を終了
トヨタのポルテは、運転席側はヒンジドア、助手席側は大型の電動スライドドアの非対称車。人気となったが、2020年に生産を終了

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 左右非対称車だから、一般の対称車に対して走行性能や安全性能が劣るということはありません。非対称車は、それをキャンセルするだけの十分な補強がされているからです。

 ただ、コストがかかっていたり、重量が増えている場合が多いため、価格や燃費には影響してくることが考えられます。何を重要視するのかで「いいクルマ」の定義は変わってきますので、クルマを購入する際は、そのあたりをよく考えて購入しましょう。

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