人知れずひっそりと販売終了……でも、渋かったスズキエスクードの残した功績!!

 今年9月30日、4代目のスズキエスクードが人知れず(?)ひっそりと販売終了になった。今年6月をもってハンガリーのマジャールスズキでの生産が終わり、9月の完成検査実施分で出荷終了に。

 そして在庫分をほぼ売り切ったということで、9月30日にスズキの公式サイトからその名を消したのだ。そこでエスクードの残した功績について考えてみたい。

文/伊達軍曹
写真/ベストカー編集部

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■マクロな観点から見た4代目エスクード

 今回、ベストカーWebから命じられたのは「4代目エスクードが残した功績を書け」というものだが、4代目エスクードを買ったオーナーから見た場合の功績は、「いいクルマが誕生してくれた」という以外にはないだろう。

 日本ではあまり売れず、存在としてもかなり地味だった4代目スズキエスクードだが、素晴らしく出来のいいコンパクトSUVであったことは間違いない。であるからこそ、それを購入したオーナーにとっては4代目エスクードの存在自体が「功績」となる。

 だが。本稿で求められているのは、そういったミクロな話ではなかろう。もっとマクロな観点から「4代目スズキエスクードが残した功績」を考えてみるべきなのだ。

 ならばその線で考えてみると……すぐに思い当たった。

■ニッポンSUVの多様性はエスクードに守られた!

 4代目スズキエスクードの功績。それは、「ニッポンのSUVのラインナップが『大手コンビニの棚』みたいになることを防いだ」ということにほかならない。

 ややわかりにくいと思うので、説明しよう。

 ご存じのとおり、1988年に登場した初代と1997年登場の2代目エスクードは、ラダーフレームを採用した本格クロカンとしての資質も持つ「クロスカントリーセダン」で、2005年登場の3代目も、ラダーフレームとモノコックボディを溶接して一体化させた「ラダーフレームビルトインモノコック構造」と副変速機を持つ本格四駆的SUVだった。

 しかし、2015年10月に発売された4代目エスクードは一転してSX4 Sクロスのプラットフォームをベースとするモノコック構造となり、基本駆動方式は歴代エスクード初のFFとなった。

■どんなSUVだったのか

 要するにエスクードは、それまでの「街も走れる本格クロカン」から「主に街を走るためのSUV」へと変節したわけだが(そのため、2017年4月まではラダーフレーム構造の3代目も併売された)、だからといって、4代目のエスクードが「チャラいSUV」になったわけではない。

 事実はむしろその逆で、4代目スズキ エスクードは、クルマを愛好する者が乗れば「なるほどコレはいいかも!」と即座に思わせるだけの力を持つ、いぶし銀的なコンパクトSUVだったのだ。

日本仕様は販売終了になってしまうエスクードだが、欧州向け仕様の「ビターラ」は2022年にストロングハイブリッドを搭載した新型へバトンタッチされる。日本市場はどうか
日本仕様は販売終了になってしまうエスクードだが、欧州向け仕様の「ビターラ」は2022年にストロングハイブリッドを搭載した新型へバトンタッチされる。日本市場はどうか

 ライドフィールは常にフラット感にあふれており、うねりや段差のいなし方も非常にお上手。最高出力117psの1.6L直4エンジンは特段パワフルではないが、アイシンAW製6速ATとのマッチングがいいのか、比較的重心の高いこのSUVをきわめて小気味よく走らせることに貢献した。

 もちろん、悪路走破性能は3代目までよりは劣るはずだが、とはいえ電子制御カップリングで後輪に駆動力を配分する「ALL GRIP」により、一般的なユーザーが一般的な悪路や雪道などを走るぶんには、何ら問題のない性能を発揮していた。さらに言えばアダプティブクルーズコントロールも全車標準装備だ。

■「大手コンビニの棚」じゃつまらない

 そのようになかなか優秀な4代目スズキエスクードだったが、日本ではあまり売れなかった。というか、そもそも日本市場での目標販売台数自体がかなり少なめであった。

 それゆえ、一部のスズキファンからは大いに愛された4代目エスクードも、市場全体から見ると「地味でマイナーな存在」で終わってしまったわけだが、4代目エスクードの功績とは――というかそれはスズキの功績かもしれないが――「それでも約6年間はマーケットの前線に出続けた」ということである。

 もしも4代目のエスクードをスズキが輸入せず、日本で売られるSUVのラインナップが「主にはトヨタライズとC-HRとハリアー、ホンダヴェゼルと、あとはベンツのGクラスだけ」みたいな状況になっていたとしたら、世の中はどうなっていただろうか?

 それはそれでもちろん悪くはなかったのかもしれないが、筆者としては、そこには「大手コンビニの棚」のようなつまらなさを感じたと思う。

■マイナー車があるからこそ市場全体が豊かになる

 ご存じのとおり大手コンビニチェーンは、かぎられた棚スペースのなかで最大の売上を上げるため、「売れ筋商品」以外は棚に置かない。

 POSデータの分析で判断された超売れ筋だけが棚に並ぶことを許され、コンビニ本部から見れば微妙な、しかし消費者から見ると「個性的で愉快」かもしれないマイナー系の商品は、基本的にはあらかじめ排除されているのだ。

売れ筋ばかり並べたら多様性が失われ、砂漠のようにつまらなくなる。マイナーな存在が全体の豊かさを生む
売れ筋ばかり並べたら多様性が失われ、砂漠のようにつまらなくなる。マイナーな存在が全体の豊かさを生む

 その結果としてコンビニは、文字どおりコンビニエントな(便利な)スポットとなっているわけだが、いささか多様性に欠けるその棚は、砂漠のようにつまらない――と見ることもできる。実際に買うかどうかは別として、見たことのないようなマイナー系カップ麺も並ぶことで、「棚の豊かさ」は生まれるのだ。

■エスクードの存在価値

 それと同じ意味で、4代目スズキエスクードはマイナーだったからこそ、そこにあるだけで、自動的に価値を生んでいた。

 実際に買う人は少なかったかもしれないが(かく言う筆者も、これだけホメているエスクードは買わずにスバル XVを買った)、「SUVにおける決して画一的ではない選択肢」という価値を、4代目のエスクードは全国民に与えていたのだ。

 そんなエスクードが市場から退場していったのは、ビジネスの必然ではあったのだろう。

 だが「多様性がもたらす価値」という観点から言うと、それは、日本国民にとっては意外と大きな痛手なのかもしれない。


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