アメリカのスタートアップで燃料電池大型トラックを開発している二コラは、かつて「トラック界のテスラ」とか「テスラのライバル」ともてはやされた。
しかし、創業者による投資家を誤認させるような行為が問題となり、証券取引委員会(SEC)が調査に乗り出し、報道の度に株価が乱高下する事態となっていた。
いっぽうで、イタリアのイヴェコ「Sウェイ」のプラットフォームをベースとするBEV大型トラック「二コラ・トレ」を発売し、このほど初めて顧客に引き渡したほか、SECとも和解金の支払いで合意、二コラはスキャンダルを抜け出したように見える。
果たして二コラは再び成長軌道に戻ったのか? 大型トラック界の風雲児の「今をレポートする。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Nikola Corporation
「テスラのライバル」と言われた二コラという会社
アメリカ、アリゾナ州フェニックスのFCEV/BEV大型トラックメーカー・二コラは12月21日、米国の証券取引委員会(SEC)との和解で合意した。二コラが1億2500万ドル(約143億円)を支払い、SECの調査はすべて終結する。
2016年に、ゼロエミッションの大型FCEVトラックを発表した二コラは、乗用車で先行するテスラと比較され、両社とも発明家の二コラ・テスラを社名の由来としていることもあって、テスラのライバルと目されて来た。
しかし2020年の株式上場後に疑惑が持ち上がった。大型FCEVとされた「二コラ・ワン」は実際にはドライブトレーンを持たず、坂道を転がして動いているように見せかけただけだったというのだ。
創業者のトレバー・ミルトン氏は虚偽の説明で技術を誤認させ、株価を吊り上げた疑いがもたれ、辞任。SECが調査に乗り出していた。
スキャンダルにまみれた2020年を経て、二コラはトラック以外の事業の大部分を廃止、ワン後継のFCEV「二コラ・ツー」および、イタリアの商用車メーカー・イヴェコ社の大型トラック「Sウェイ」をベースとする「二コラ・トレ」の開発に専念していた。
こうした巻き返しが奏功して、12月17日には初の市販トラックとして「トレBEV」を顧客に納入したのに続き、21日にSECとも和解した。……というのが二コラの現状である。
なお、「トレ」はもともとは欧州向けの大型トラックとして発表されたものだ。スキャンダル前の2019年にイヴェコとの提携が発表され、同社の新世代大型トラック「Sウェイ」プラットフォームをベースに開発することが明かされた。
開発はドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州ウルムにあるイヴェコのシャシーエンジニアリングの拠点で行なわれ、FCEVとBEVの両方を開発するが、BEVの生産が先行し、2021年前半中に製造開始、同年中に納入というロードマップであった。
予定としては、「IAA2020国際商用車ショー」でプロトタイプのお披露目となるはずだったが、新型コロナウイルスのパンデミックがあり、ショー自体が中止に……。さらに前述の疑惑なども重なった。
ただ、そんな中でも当初のロードマップ通りにトレBEVを顧客に引き渡しているので、「いろいろ」あった中、二コラは復活を果たしたと言えそうだ。
ちなみに”Tre”には「3」という意味もあるが、二コラ・ツーのリリースが2024年の予定なので、「2」より先に「3」が発売された形だ。
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