二コラ・トレはどんなトラックか?
カリフォルニア州のドレージ会社に引き渡されたトレBEVは、量産化前のパイロットモデルという位置づけ。この会社は二コラのトラック100台の購入を検討しており、パイロットトラック(BEV2台、FCEV2台)が実運用で良好な結果を残せば正式に追加発注するという。
もともと欧州向けとされたトレは、二コラとイヴェコが共同開発するトラックで、アメリカで販売されたトレもドイツのウルムで製造したものだ。両社はハンブルク港への25台の供給契約を明らかにするなど、欧州市場でも展開している。
トレはBEVとFCEVがモジュラー設計となる大型トラック(車型はセミトラクタのみ)で、FCEVは同じくウルムで2023年の生産開始を予定する。
(ここまで断りなく使っているが、「BEV」はバッテリー式EV、「FCEV」は燃料電池式EVのこと。水素燃焼エンジンなども登場しているので、最近はこのような略語が一般的になってきた)
なお二コラはアリゾナ州に製造拠点を整備しており、2023年中に年産2万台規模の生産キャパシティを目指しているので、北米市場の量産モデルはここで生産されることになりそうだ。
BEVとFCEVで大きく違うのは(ドライブトレーンの違いは除いて)航続距離で、BEVの350マイル(563km)に対してFCEVでは500マイル(805km)となっている。
充電/充填時間は、BEVが120分(CCS1/CCS2方式・DC240kWの10-80%充電)、FCEVは20分。馬力はどちらも645hp(continuous)で同等。そのほかFCEVの細かなスペックはまだ公表されていない。
トレBEVのアクスル構成は6×2、ホイールベースは186インチ(4724mm)。アメリカの長距離輸送は6×4トラクタが主流なので、リージョナル(短・中距離)を想定したモデルだ。
GCWは8万2000ポンド(37.2t)、バッテリー容量は753kWhだ。今のところ車両重量を明らかにしていないので積載量も不明だが、カタログのアプリケーション例に”Lighter Payload”とあり、それなりに自重は嵩むものと思われる。
キャブはイヴェコのフラッグシップ・Sウェイをモディファイしたものなので、ドライバーの安全性や快適性に関しては折り紙付き。ただキャブ展開はFCEVも含めてデイキャブのみのようだ。
スリーパーキャブを擁する長距離輸送用トラックの本命は、2024年に発売を予定している「二コラ・ツー」となる。同車は、出力や水素の充填時間はトレと同等を維持しつつ、900マイル(1450km)という長大な航続距離の実現を目指す。
アメリカントラックの代名詞であるボンネットこそ持たないが、空力性能を求めて傾斜させたキャブはいわゆるセミボンネット型に相当する形状で、キャブオーバータイプとは異なる。
疑惑を乗り越えて復活を果たした二コラは、変革の時代にあってアメリカントラックの新潮流を作り出すのか。今後ますます目が離せなくなりそうだ。
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