JAFによると、ロードサービス出動理由として、「バッテリー上がり」に次いで多いのが「タイヤのパンク」。
タイヤのパンクが原因でJAFが出動する件数は年間382,439件におよび、毎日100件以上、日本のどこかでパンクやバーストが発生していて、JAFの救援を受けているということだ(これは「JAF出動件数」であり、出動していないケースを含めるとこの数倍は発生していると考えられる)。
最近のクルマは、スペアタイヤではなく、応急補修剤(パンク修理キット)が装備されていることが多く、タイヤがパンクした際、大きな損傷やタイヤ側面の損傷でなければ、この応急補修剤を使って応急処置をする、というのが自動車メーカーから推奨されている。
この応急補修剤については、使用して補修をしてしまうと、もうそのタイヤは修理をすることができず、その後は新品に交換しなければならない、といわれている。しかし、そんなことはない。
文:吉川賢一
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某大手タイヤショップの販売サイトでは、応急補修剤のデメリットとして、「使用後にタイヤの内部が液剤でベタベタになるため、内面パッチ等の修理ができなくなる可能性がある」と記載されている。また、タイヤを扱っている大手量販店でも、タイヤを買い替える前提であれば応急補修剤の使用は問題ないが、それ以外の場合はおすすめしない、としている。
しかし、応急補修剤を使った後でも、パンク修理は可能だ。ただし、極一部のコンフォートタイヤに使われている特殊吸音スポンジ付きタイヤなどは、染み込んでしまった液剤の除去ができないので、吸音効果を維持したいのであれば、タイヤ交換が必須となる。
ではなぜ、自動車整備工場やタイヤ専門店は、応急補修剤を使うとパンク修理ができない可能性がある、としているのか。それは「手間がかかる」からだ。
「できない」とするのは、除去工数が予測できないから
応急補修剤を使用したタイヤのパンクを修理するには、修理作業をする前に、まず付着した応急補修剤をふきとる必要がある。応急補修剤の残りの漏れだしに注意しながら慎重にタイヤをホイールから外した後、タイヤの内側やホイールに付着している応急補修剤をウエスなどで綺麗にふき取るのだが、応急補修剤がべたつくため、拭き取り作業にかなり手間がかかってしまう。
もちろん別途工賃をとっているが、応急補修剤によっては、タイヤ内側のゴム成分を少しだけ溶かしてトレッド面全体に膜を張るタイプの液剤もあるので、液剤除去にかかる時間工数が予測できない。短い時間で多くの作業をこなさないとならない現場のメカニックの工数を予測できないとなれば、「できない」とされるのも仕方のないことかもしれない。
この面倒な作業を楽にするため、最近では水性の応急補修剤が増えている。水性だと、タイヤを外した後に水で洗い流すことができるので、掃除の手間が大きく省ける。自身のクルマの応急補修剤を確認しておくと、万が一のパンクの際に役立つかもしれない。
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