LED化によって進む、配光技術
ヘッドライトのLED化が進むと、明るさが向上する一方で、対向車にとっては幻惑(眩しさ)によって危険な状況になる場合があります。明るさを確保しながら眩しさを避ける方法として、近年、自在に照射エリアや照射量を最適化する配光制御の採用が進んでいます。
最も一般的な配光制御は、ハイビームとロービームを切り替えるオートハイビームです。さらに、対向車や歩行者などの幻惑を回避するADB(アダプティブ・ドライビング・ビーム、配光可変ヘッドライト)、ステアリングを切った方向に照射して視界を確保するAFS(アダプティブ・フロントライティング・システム、配光可変型前照灯システム)などがあります。
・オートハイビーム制御
道路運送車両法の保安基準では、通常はハイビームで走行し、対向車とすれ違うときや前方に先行車がいるときにはロービームに切り替えること、またロービームの照射距離は40m、ハイビームの照射距離は100mと定められています。
オートハイビーム制御では、ハイビームとロービームを自動で切り替えます。前方車両(先行車と対向車)をカメラなどで検知するため、自動緊急ブレーキシステムが搭載されているモデルのほとんどは、オートハイビームも採用しています。
切り替える手法としては、複数のLEDの発光箇所を切り替えるブロック制御方式と遮蔽板で切り替える可変シェード方式があります。
・ADB(配光可変ヘッドライト)
オートハイビームの進化版である、ADB。ハイビームで走行中に対向車を検知すると、その車両のエリアのみ遮光し、他の領域はハイビームのまま照射するため、前方車両のドライバーに眩しさを与えることなく、ハイビームで遠方の視界が確保できます。
切り替え手法は、オートハイビーム制御と同様にブロック制御とシェード制御が使われます。基本原理は同じですが、メーカーによってAHS(アダプティブハイビームシステム)、ALH(アダプティブLEDヘッドライト)、マトリクスLEDヘッドライトなどと呼ばれます。
2004年にアウディとBMWが採用を進め、その後国内でもトヨタのレクサスやクラウン、マツダのCX-8やCX-5など多くのモデルに採用されています。
・AFS(配光可変型前照灯システム)
AFSは、コーナリング走行中にステアリングを切った方向に光軸を移動させて、進行方向前面を照射するシステムです。いち早く、死角の車両や人などの障害物を発見して、安全に回避行動を取ることができます。
基本的な手法は、ライトの光源をステアリング舵角や車速に応じて自動で左右に動かします。また、コーナリング時には左右に内輪差があることを考慮して、左右のライトを異なる角度で動かして視認性を上げます。
世界で初めて採用したのは、2003年に登場した2代目ハリアーのインテリジェンスAFSで、その後同様のシステムの採用が進んでいます。
レーザーライトやブロードスキャンなどの最新技術も!!
最後に、最新のヘッドライト技術を2つ紹介します。
・レーザーライト
2015年、BMWとアウディは、オプション設定でレーザーライトを実用化しました。照射範囲は、LEDの300mに対して約2倍の600mと格段に広く、デザインの自由度もさらに高められます。もちろん、半導体レーザーは高価なので、普及にはまだ時間がかかりそうですが、将来に向けた次世代光源の本命と位置付けられています。
・ブロードスキャンADB
レクサスシリーズで採用されているのが、ADBを発展させたブロードスキャンADBです。12個のLEDを走査(スキャン)することで高精度な配光を実現し、対向車や前走車に対する遮光範囲を制御可能としました。これにより、遮光範囲を必要最小限の範囲に狭めて、対向車側から横断する歩行者などを早期に発見できます。
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ハイビームだと視界は確保できるが対向車を幻惑するので危ない、でもロービームだと、照射距離が短いため歩行者や障害物の発見が遅れて危険。これを解決するのが、最新のLEDヘッドライトを使った配光制御技術です。今後さらに進化して、夜間の交通事故防止に貢献してほしいですね。
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