ルノー今後の方針に苦悩? 露自動車メーカー「AVTOVAZ」との関係性とは
こうしたロシア市場の現状を踏まえると、ルノー日産三菱アライアンスとして、ロシア市場への今後の方針をどう展開するべきか、苦悩するのは当然だと言えるだろう。
実際、ルノーがロシア市場に対して正式コメントしたのは2022年3月23日と、日系メーカー各社等と比べると数週間遅い。3月23日の発表は、ルノーとしてのもので、ロシア国内での事業を一時的に停止すると発表した。さらに、ロシアの自動車メーカーのAVTOVAZとの資本関係を考慮して今後の対応を進めていくとした。
AVTOVAZはロシア最大の自動車メーカーで、2014年にルノー日産(当時)が経営権を取得している。そのため、AVTOVAZのブランドであるLADAは現在のルノー日産三菱アライアンスと車体や部品などの共通性が高い。
また、AVTOVAZはロシア政府とのつながりが強いとされている企業だ。ロシアのウクライナ侵攻が続き、世界の主だった企業はロシアの政治姿勢に対して批判し、前述のようにロシア市場から完全撤退する動きが高まるなかで、ルノーとしてロシア事業に対する今後の事業方針を精査するため、他の自動車メーカーと比べてより多くの時間を要したと考えられる。
今回のルノーのロシア市場対応策の発表を受けて、ロイター通信の報道によると、ルノーの時価総額はロシアによるウクライナ侵攻が始まった1カ月間で、なんと40%も下落している。また、同じくロイター通信は、アメリカのシティバンクからの情報だとして、ルノーのAVTOVAZに対する株式の保有比率は69%。そこからの利益が、ルノー全体での利益の8%に相当するとのデータを公開している。
1991年以降、ロシア連邦として経済の民主化活動が活発になったとはいえ、中央政府による集権的な社会主義国家であるという実態が、今回のウクライナ侵攻で鮮明になったロシア。
そのなかで、国家とのつながりが深いとされるAVTOVAZとの関係が強い、ルノーにとって、極めて大きな正念場だといえる。
ただし、ロシアとウクライナの国家としての関係が今後どのような形になろうとも、両国で暮らす人々にとって自動車は生活必需品であり続けることに変わりはない。
ルノー日産三菱アライアンスのみならず、自動車産業界全体として、さらにエネルギー関連など全ての産業界にとって、ロシアとのこれからの付き合い方を、生活者の立場で考えていくことが重要だと感じる。
すでに多くの犠牲者を生んだ2国間の戦争。一刻も早く終戦をむかえることを心から祈りたい。
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