クルマとしての完成度が高いフリード、ただ荷室には課題も
軽自動車を除くと、ホンダのラインアップで最も売れているフリード。シリーズ累計で国内累計販売台数が100万台を突破したという(2021年6月時点)のは非常に凄いことだ。
フリードと2列シート車のフリード+は、2019年の10月に行われたマイナーチェンジで、エクステリアにクロスオーバースタイルのテイストを持たせたモデル、「CROSSTAR(クロスター)」を新設定している。
フロントグリルとバンパー、サイドシルガーニッシュ、リアロアスポイラー、ルーフレール、専用アルミホイールなど、標準モデルと異なる専用エクステリアが与えられ、アウトドアをイメージさせるデザインに寄せてはいるが、「アウトドア風味」といったところ。シエンタの徹底ぶりに比べると、実にささやかな変更だ。
フリードの長所は、スタイリッシュな男らしさと、アクセルオンの時の静粛性だ。「キッ」とつり上がったアイラインやフロントグリル形状、直線基調のサイドラインなど、かつてラインアップされていたストリームや、マイチェン後のオデッセイのような「クール&ワイルド」なデザインを踏襲。木目調のダッシュボードや、シートの素材、インパネやセンターコンソールに使われている材料の質感がシエンタと比べると遥かに高く、ワングレード上のクルマのような内装となっている。
車内も広く、視界のよさや使い勝手、シートレイアウトもいい(6人乗りのセカンドキャプテンシートが良いという声が多い)。フリードに限らず、ホンダのコンパクトカーのインテリアは、質感が非常に高い。
フリードには、1.5リッター直4ガソリンエンジンとCVT、もしくは、1.5リッターエンジン&1モーター+7速DCTのハイブリッドの2パターンが用意されているが、シエンタのような「ガーガー」というエンジン音ではなく、非常に心地よい音質に感じる。安心のホンダセンシングに後方誤発進抑制機能も追加されて、全タイプに標準装備にもなっているなど、クルマとしての完成度が高い。
そんなフリードだが、やはり短所はある。それはバリエーションの少なさ、3列目シートを跳ね上げ格納した時の荷室狭さの2つだ。現行フリードには、前述したフリードクロスターや、熟練エンジニアが磨き上げた走りの良さを打ち出した「フリードModulo X」がラインアップされてはいるのだが、どれもベースとなるフリードとたいして変わらないエクステリアデザイン。クロスターをもう少しチャレンジしてしてもよかったようにも思うが、冒険をしなかったのは、やや残念なところだ。
そしてもう1点、フリードは、低床構造に拘った結果(確かにリアの開口部地上高480mmはダントツ低いのだが)、3列目シートをサイドへ跳ね上げて格納するタイプとなっており、荷室スペースが狭い。ヴェゼルのように、2列目シートを床下にすっぽりと格納する技術をホンダは持ち合わせているはず(むしろ得意なはず)。
2列シート車だと、3列目がないぶん、ぽっかりと大きな空間が空くのだが、3列目があってこそのコンパクトミニバンだけに、多くの方が3列シート車を購入しているとのこと。ユーザーのなかには、3列目シートを格納しても、たいして荷室エリアをつくれない、と苦労されている方がいるようだ。
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新型シエンタは、今夏には発売開始となる予定だ。そしてそれを受け止めるフリードもまた、2023年にはフルモデルチェンジとなる見込み。強力なライバル関係の2者が、この先もライバル関係を続けられるのか、それとも、どちらかが圧倒的な強さを持つことになるのか、このコンパクトミニバン2台の動向からは目が離せない。
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