「伝説の名車」と呼ばれるクルマがある。時の流れとともに、その真の姿は徐々に曖昧になり、靄(もや)がかかって実像が見えにくくなる。ゆえに伝説は、より伝説と化していく。
そんな伝説の名車の真実と、現在のありようを明らかにしていくのが、この連載の目的だ。ベテラン自動車評論家の清水草一が、往時の体験を振り返りながら、その魅力を語る。
文/清水草一
写真/マツダ、フォッケウルフ
■エンスーおじさん2人が語る「FD」の裏話
RX-7の3代目、最終モデルである「FD」は、国産絶版スポーツを代表する1台。現在は中古車市場でとんでもない高値がつけているが、生産終了から20年を経て、相場の高騰だけに焦点が当たり、走りの実像は徐々に忘れられているようにも思える。
そこで今回は、ベストカー本誌の人気連載『エンスー解放戦線』の名コンビである清水草一氏と渡辺敏史氏に、名車3代目RX-7ことFD3Sについて、番外編として語ってもらった。なにしろ渡辺氏は現役のFDオーナー。オーナーならではのディープな話が聞けるはずだ。
◆ ◆ ◆
清水 ナベちゃんのFD、グレードは何だっけ?
渡辺 6型のタイプRバサーストです。
清水 ほとんど最終型だね。
渡辺 一応280馬力です。いま一番高値が付いてるのは、最後に限定で1500台で販売されたスピリットRですけど。
清水 距離が極端に少なければ2000万円! ってヤツだね。
渡辺 僕のはそこまでいきませんウフフ~。実は僕、FDは2台目なんですよ。
清水 えっ、そうだったの!?
渡辺 今のを買う1年前に、265馬力の一番シンプルなヤツ(タイプRB)を買ったんです。当時『マツダ車購入資金応援プレゼント』っていうキャンペーンをやっていて、軽い気持ちで応募したら、100万円当たっちゃって
清水 ええーーーーっ!!
渡辺 それで逃げられなくなりました。
清水 いやー、当時の状況、なんとなく思い出すなぁ。マツダは売れるクルマが全然なくて、経営がとっても苦しかったんだよね。
渡辺 フォードからマーク・フィールズが社長として派遣された頃です。
清水 フォードの支援がなけりゃ存続は不可能っていう状況だった。100万円当たる懸賞なんて、今のマツダじゃ絶対ありえない!
渡辺 ディーラーをレクサス店みたいにしちゃってる今のマツダには、考えられない泥臭い販促キャンペーンでした。そのおかげで購入できたんですけど、1年後くらいに横からトラックに突っ込まれて、全損になっちゃったんです。
清水 で、またFDを買ったんだ!
渡辺 はい。タイプRバサーストになりました。
コメント
コメントの使い方