ボルボ快進撃の裏側を探る ほんとにいいのか!? 何がいいんだ!? 

■ヒットの要因は北欧デザインにあった!?

TEXT/大谷達也

最新ボルボのデザインを指揮したのはトーマス・インゲンラートだ。6年前に前任のピーター・ホーバリーからデザイン担当副社長の役職を引き継いだ彼は、昨年6月にボルボのサブブランドにあたるポールスターのCEOに就任したが、XC90に始まるボルボの新世代デザインはいずれもインゲンラート率いる同社のデザインチームが生み出した作品。今後登場するXC40などのニューモデルも、すべて彼が手がけたものだ。

前任のピーター・ホーバリー氏(ジーリーグループ上級副社長に)に代わり、2012年7月からボルボ・カー・グループのデザイン担当副社長に就任したトーマス・インゲンラート氏。同氏は1991~1994年にアウディ、1995~2000年にVW、2000~2006年にシュコダのデザイントップを歴任、2006年にはVWブランドセンターの所長に就任しVWデザインを統括していた。2013年から順次ボルボクーペコンセプト、コンセプトXCクーペ、コンセプトエステートを発表、これが後に市販車の90シリーズとなる。写真はコンセプト40.1(XC40)、コンセプト40.2(V40)発表時。トーマス・インゲンラート氏は昨年6月、高級電気自動車部門のポールスターのCEOに就任し、10月には600psのPHEVクーペ、ポールスター1を発表

こう聞けば、ボルボの復活劇がインゲンラートの手腕に多くを頼っていたことが明らかになる。では、彼の作品はどうしてこれほど多くの支持を得られたのだろうか?

前任者ホーブリーのデザインは、現行V40に代表されるように実に躍動的。これは全体的なプロポーションを後ろ上がり基調にするとともに、エモーショナルな曲線を多用することで実現したものだ。

対するインゲンラートのデザインは水平基調で直線中心。その意味では、彼の元の職場であるフォルクスワーゲングループのデザインと共通する部分もあるが、もしもそれが単なるコピーに留まっていたら、ここまでの成功は収められなかっただろう。

インゲンラートは水平基調で直線的な造形にスカンジナビアとボルボの伝統を折り込んで独自の世界観を構築した。ここにこそ、成功の秘密はあったと私は睨んでいる。

インテリアデザインはベントレー出身のロビン・ペイジ氏が新型90シリーズの皮切りとなったXC90から担当、世界各国で数々の賞を受賞。モダンで温かみのあるデザインである

シンプルで直線的なデザインの北欧家具が嫌い、という人は滅多にいないはず。一見したところ冷たそうに思えて、実は温かみのある北欧家具のデザインは、先進的に見えながら時代を越えて愛され続けるという、いくつもの相反する要素を備えている。幅広い層から支持される理由は、この点にあるはずだ。

さらにインゲンラートは、ここにボルボの伝統的なデザイン・アイコンを盛り込んだ。アイアンマークを中心とするフロントグリルは、誰が見てもひと目でボルボと認識できるものだし、直線的で水平基調のデザインは1960年代の140シリーズで登場し、その後の240シリーズ、740シリーズにも引き継がれたトレードマーク的存在。これもまた、長い伝統に根ざしたボルボ一族の末裔にあたることを示す特徴といえる。

もっとも、どんな優れたデザインコンセプトも完成した作品が美しくなければなんの意味もない。この点でもインゲンラートは類い希な才能を発揮しており、バランスのいいプロポーションに怜悧で緻密なディテールを盛り込むことで全体として実に美しいエクステリアに仕上げた。フロントオーバーハングの短縮を可能にした新プラットフォームSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ)もプロポーションの改善に大きな役割を果たしている。

最新ボルボのもうひとつの魅力がインテリアで、ダッシュボードには天然木の風合いを生かした素材を、シートには手触りの柔らかなレザーを多用することで温かさと質の高さを両立したキャビンを作り上げている。明るめの色調を中心としたインテリアカラーのラインアップも見事だ。

さらには各シリーズで微妙にデザインコンセプトを変えた点も注目されるが、ここで紙幅が尽きた。あとはご自身の目で最新ボルボ・デザインの魅力を確認してほしい。

※日本におけるボルボの販売拠点数107、サービスショップを含む拠点数は114。日本で販売されるボルボ車の車種別生産国はスウェーデン生産がV90、V90クロスカントリー、XC60、XC90、ベルギー生産がS60、V60、V60クロスカントリー、V40、V40クロスカントリーとなっている。

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