ボルボ快進撃の裏側を探る ほんとにいいのか!? 何がいいんだ!? 

■褒められすぎ!? ボルボ車に死角はないのか?

続いてはクルマの本質に迫ってみたい。ボルボの各車種をさまざまな角度から検証し、死角はないのか? さらに代表的な車種のいいところと悪いところも挙げてもらった。

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TEXT/国沢光宏

ボルボに死角がないかと聞かれたら、瞬時も躊躇わずに「ある!」と答える。ボディ幅だ。

なにしろXC60ですら1900mmもあり、XC90の1930mmとほとんど変わらない。さらに間もなく日本で発売される新鋭XC40のスペックを見たら1863mm。これまたXC60に肉薄するほど幅広い(海外仕様。日本仕様は未定ながら1860~1865mm程度になると思う)。XC40、C-HRなどと同じCセグメントなのだ。

V40 299万~455万円/いいところ=T2の価格は強烈である。1500ccターボに安全装備テンコ盛り&ナビ標準装備。シビックの5ドアより圧倒的に安い。安いとはいえ内容文句なし! ボディ剛性高く、ハンドリングもスポーティ。190馬力のディーゼルを搭載するモデルは笑っちゃうくらいトルクフル。スポーティモデルといっていいほどパワフルだ/悪いところ=Cセグメントのなかでキャビンスペースが一番狭い。5ドアHBながら、シルエットからすればクーペ風。だからカッコいいという人もいます/全長4370×全幅1800×全高1400mm

ただワイド化はボルボに限ったことじゃない。BMWの新型X3もXC60と同じDセグメントベースのSUVで車幅1891mmある。アウディ Q5だって1900mm。日本車は少し控えめながら、CX-5の1840mmすら充分ワイドだと思う。

CセグメントもXC40の1863mmが標準的になっていく? 実際、車庫事情の悪い日本で乗ろうとした場合、けっこう気合いが必要。ドアを開閉できるか確認しなければならぬ。

V60(469万~634万円)/良いところ=モデル末期ということでお買い得感がメチャクチャ高い。1500ccターボ搭載のT3など見積もり取ったら「ええっ?」と乗り出すほど魅力的な金額です。もちろん安全装備すべて標準だし、WTCCでシビックをやっつけ、クルマ全体のブランドイメージも上がった。またV40と比べふた回りくらいキャビンスペースが広いため、ゆったり乗れる/悪いところ=おそらく今年秋には新型を発表することだろう(日本に入ってくるのは2019年か?)。買うなら長く乗るつもりで/全長4635×全幅1865×全高1480mm

もちろん一般的なタワーパーキングだと、車幅1850mm超えてアウト。まぁSUVの多くが車高制限に引っかかるためハンデにならないと思いますけど……。

次期V60が車幅1850mmに収まればタワーパーキングでイケる。一方、走行中は幅広ボディも気にならない。ボルボも充分認識しており、ドアミラー形状を工夫し、あまり飛び出さないようにした。ドアミラー畳むような道を走るような人を除けば、何とかなると思う。

V90(679万~964万円)/良いところ=カッコよかった頃のアメリカ車のステーションワゴンのようにワイド&ロー。イマドキあんなシルエットのクルマありません。自動ブレーキも最新スペック。乗り心地やハンドリングはベンツEクラスやBMW5シリーズに勝るとも劣らず。運転アシストの総合評価で世界トップ。渋滞時は自動運転である/悪いところ=残念ながら気軽に買える価格帯のモデルではない。またボルボ自慢のディーゼルエンジンのラインアップもなし。今やこのクラスの売れ筋はディーゼルになってしまった/全長4935×全幅1880×全高1475mm

それ以外に死角がないか? 熟考するも「思いつかないですね~」。以下、本当にないいか、さまざまな評価項目を挙げて考察していきたい。

■メカニズム

基本的に2L 4気筒だけで勝負するという戦略ながら、今のところあまり弱点となっていない。そればかりか、WTCC用のレースエンジンを量販ブロックで作れるほどで、積極的に「よい!」と評価されているのだった。ディーゼルも触媒タイプはスス溜まるなど世間一般と共通する弱点を持つが、尿素を吹くシステムに切り替わっていけば、あまり神経質になる必要ない。電動化は「優」である。

XC90(789万~1309万円)/良いところ=この価格帯になるとクルマの完成度だけでなくブランドイメージも必要になる。ということを考えれば世界的な規模で期待以上に売れているようだ。グレードに幅があるため、予算に応じたエンジン&装備をチョイス可能。雪の降る地域の社長さんはリムジン仕様など快適で安心だ。自動ブレーキ性能は大型SUVじゃダントツの世界一である/悪いところ=初期モデルは乗り心地が硬かったため、よいお客さんを逃したと思う。日本市場に限って言えばディーゼルが欲しいです/全長4950×全幅1930×全高1775mm

■先進安全装備

世界中の自動車メーカーがボルボをベンチマークにしていることを見てわかるとおり、世界トップである。先端技術はすべて標準装備。その上で、昼夜問わず歩行者を検知可能な自動ブレーキに始まり、コースアウトして着地した際、下から受ける衝撃を緩和するためのシートレール構造など、枚挙に暇なし。新世代のボルボなら、常識的な速度で走っている限り事故を起こすのが難しいほど。自動運転技術も熱心。

■走り

フォード傘下だった時代、ボルボの走りは眠かった。安全性を確保するための必要最小なハンドリングしか持っていなかった、と言い換えてもよかろう。フォードの呪縛から抜けるや、猛ダッシュ! すでにV40すら今までのボルボとまったく違う「楽しさ」を持っていた。

私も最初にV40のハンドル握った途端「どうしちゃったの?」。今やハンドリングも乗り心地も文句なし。SUVはベンツやBMWすら凌ぐ!

XC60(599万~899万円)/良いところ=現在このクラスのSUVで最も高い総合性能を持つ。T6を選べば320ps/40.8kgmという4L NAエンジン並みの走りをみせるし、D4であればハイブリッド車を軽く凌ぐ燃費。足回りもハンドリングと乗り心地の上質感を兼ね備えており文句なし! 実際、ベンツGLCを相手にせず、BMW X3やアウディQ5と乗り比べたって優位/悪いところ=1900mmという全幅、日本で使うなら50mm狭ければと考えます。T8のドライバビリティが若干クセがある。このグレードを買うならしっかり試乗して確認のこと/全長4690×全幅1900×全高1660mm

■クオリティ

あまり知られていないことながら、ボルボの故障率は輸入車のなかでダントツに少ない。なぜか? 日本製の部品をたくさん使っているためだと言われる。トランスミッションはアイシン製。インジェクションを含めた電気系もデンソー。ここにきて使い勝手がよくなったナビは三菱電機製だ。ベンツやBMW、VWなどはドイツの部品メーカーを使わなくちゃならないのが厳しいところ。

■居住性

これまたフォードの束縛から解放されて以降、急速に向上してきた。ご存じのようにV40とフォーカスは兄弟車種なのだけれど、質感が圧倒的に違う。以後、ボルボの独自開発となるXC90で素材もコストをかけ始め、S90/V90はライバルのベンツEクラスやBMW5シリーズと比べたって負けていない。長く暗い冬を快適に過ごせる北欧家具風の明るく広く感じるインテリアは、クルマと相性もよい。

XC40(389万円〜559万円)/良いところ=ドイツ車の場合、大きさの違いは高級感の違いでもある。けれどXC60とXC40を比べると、キャラクターを変えているのだった。XC40はカジュアル&スポーティで遊び心タップリ。XC60はフォーマルだ。V40と違いキャビンスペースがキッチリ確保できており、ファーストカーとして使っても、不満なし。/悪いところ=日本仕様に当面ディーゼルはラインアップされないという。Cセグメントのわりにワイドな車幅もマイナス要因になる?/全長4425×全幅1863×全高1652mm

■コストパフォーマンス

基本的には「優れている」と思う。例えばV40T2のナビエディションなど、299万円で自動ブレーキやブラインドスポットセンサーに代表される安全装備すべて標準されるうえ、ナビやドライブレコーダーまで付くのだ。XC60も190馬力の2Lディーゼルエンジン搭載モデルで599万円。同じ190馬力の2Lディーゼルエンジン搭載のBMW X3は662万円となる。安全装備の差など考えたらお買い得プライスかと。

以上、さまざまな方向からボルボの死角をチェックしてみたが、新世代モデルは文句なし。だからこそ日本COTY(カーオブザイヤー)も獲ることができた。割安な価格で勝負中のS60(2018年6月発表・日本未発売)とV60も、新型になったら大化けするだろう。このまま値上げをせず、競争力のある価格戦略を続ければ台数も延びていくだろう。

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