2018年3月期第2四半期の決算で営業利益1728億円と過去最高を更新したスズキ。現在ノリノリの状態だ。
それでいながら鈴木俊宏社長は「浮かれている場合じゃない」と気合いが入る。なるほど勝って兜の緒を締めろとは純日本メーカーらしい大和魂そのものの志じゃありませんか。本企画ではそんなスズキにスポットを当ててみました。
◆ 近況企業データ(2017年)
・2輪世界販売……第8位
・4輪国内販売……第3位
・2輪国内販売……第3位
・軽国内販売……第1位
・売上高……3兆1695億4200万円
・純資産……1兆3870億4100万円
※本稿は2018年1月のものです
文・写真:佃義夫、ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2018年3月10日号
■鈴木会長のカリスマ性がスズキの財産だ
スズキがこのところ、快進撃といった動きを見せている。
昨年、2017年末の自動車各社の新車発表イベントは、スズキの新開発小型車「クロスビー」で有終の美を飾った。クリスマスの12月25日に発表されたスズキクロスビーは1L直噴ターボエンジンとマイルドハイブリッド(HV)機構を初めて組み合わせて標準装備。
1.5Lの自然吸気エンジン並みの馬力が出る小型Aセグメント初のクロスオーバーSUVでその発表来、評価が高い。
また、スズキは、この新小型車クロスビー発表の直前、12月14日にも軽トールワゴン「新型スペーシア」の発表を行っている。この新型スペーシアも軽ジャンルで人気のホンダN-BOX対抗として安全装備充実でも価格を抑えるという戦略を打ち出した。
軽自動車、小型車の両分野で2018年の年明けからのスタートダッシュへ強い意欲を覗かせたのだ。
スズキは、「スイフトシリーズ」で2018年次RJCカーオブザイヤーを受賞し、海外においてはインドでの圧倒的な基盤をさらに固めるなど、内外での躍進は目覚ましい。今3月期のスズキ業績は上方修正し、売上げ・利益ともに前期比2パーセント増の過去最高を更新する見とおしだ。
このスズキの底力の源泉はどこにあるのか。
スズキといえば、「軽自動車の雄」として知られ、またインドへいち早く進出して今でもインド市場で5割近い圧倒的なトップシェアを確保している。
いずれ、世界最大市場の中国に並ぶだろうといわれるインドでの生産・販売と収益力はスズキの大きな経営基盤となっている。これは、スズキを40年近くにわたって引っ張ってきた「鈴木修」というカリスマ経営者の強力な指導力で現在の位置づけを確保したことも有名だ。
筆者は、鈴木修スズキ会長がまだ専務時代からの40年来の取材での付き合いだが、今年1月20日過ぎに某ホテルでの昼食会でテーブルを共にした。
「間もなく、会長は88歳(1月30日生まれ)の米寿ですね。また、スズキは2020年に百周年を迎える中で最近いいクルマを出しますね」に対し、「1930年生まれだから区切りがいいんだよ。スズキ百周年は90歳だな。クルマの開発はオレが口を出さなくなったからいいクルマが出てくるんだ(笑)」と相変わらずの「オサムブシ」だった。
それでも「明日からインドだ」と、かくしゃくたる様子で次の席のスズキアリーナ店副代理店大会に臨んで翌日、インドに飛び立っていった。
そのスズキがこの百年に一度の自動車大転換期において、「百年の大計」への歩をスピードアップしていく動きを強めているのである。
スズキは2020年に設立から百周年を迎える(1920年3月15日、鈴木式織機株式会社として設立)。スズキの次の百年に向けてスズキ中興の祖である鈴木修会長から本格的に次の世代の鈴木俊宏体制への方向づくりが進む。
すでに2017年にトヨタとの業務提携がインドでのEV協業で具体化し、ほかの先進技術イノベーションでもトヨタグループとの協力・協業関係によって生き抜く方針を明確にしている。
いっぽうで軽自動車だけでなく、Aセグ、BセグからCセグまでの小型車強化を積極的に打ち出しており、念願の国内小型車年販10万台をクリアして「クロスビー」発表とともに「新たに小型車国内12万台を目指す」ことが鈴木俊宏社長から宣言された。
スズキの最近の商品技術力での注目点は、ハイブリッドのバリエーションをエンジンやミッションの効率を上げて、うまく噛み合わせていることにある。また、「HERTCT」の新プラットフォームで軽量ボディを実現し、かつ価格を抑えるというのがスズキの商品戦略だ。
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