スズキは「軽自動車の雄」? だけじゃない! もっと快進撃を知ってほしい!

■小型車市場でも頭角を現わすスズキ

スズキの国内戦略は、独自の業販網(副代理店制度)活用を一貫して進めてきたことが特長だ。

軽自動車トップの座は、ダイハツとの熾烈な競争にホンダが国内を軽自動車に振ってきたことで三つ巴の戦いとなり、スズキとしての目標は軽自動車シェア30%以上の確保である。2016年の燃費データ不正問題では、鈴木修会長の全国販売店お詫び行脚でこれを払拭した経緯もある。

いっぽうで、先に紹介したように長年の課題であった小型車年販10万台が小型車商品力強化とアリーナ店体制拡充でようやく達成、クロスビー発表会見では鈴木俊宏社長から「小型車12万台へ」宣言が飛び出した。

エスクード

グローバル戦略では中国以上に今後、注目されそうなインドで2020年の百周年から次の百年への地歩を着々と固めることになる。

すでに高級販売網「NEXA」のセットアップに加え、インドのグジャラート新工場が2017年から稼働し、2020年度にインドで年販200万台、販売拠点3000店、サービス拠点5000拠点に拡大する計画も発表している。

インド政府の「メイクインインディア」政策に対応してインド工場のグローバル拠点化と、EV対応もデンソー・東芝との合弁「リチウム電池工場」建設準備に加え、トヨタと2020年頃にインド市場へEVを投入するための協力関係構築合意など、いずれもスズキ百年の大計への進撃と受けとめられよう。

■スズキの快進撃は始まったばかり

スズキのカリスマ、鈴木修会長は「重し」としての存在感を持ちながら2020年のスズキ百周年に向けて、いよいよ長男の鈴木俊宏体制への本格委譲を進めていくことになりそうだ。

鈴木俊宏社長は、2015年6月にスズキ創業家直系の嫡男としてスズキ社長に就任。1959年3月生まれで今年59歳となり、同じ創業家出身の豊田章男トヨタ社長(61歳)とは同年代だ。

鈴木俊宏体制としては、この自動車産業大転換期のイノベーションのスピード化にスズキがどう対応していくかが課題だが、昨年の段階でトヨタグループとしての協業化を明確にしてスズキ得意の分野をさらに磨く方向を固めてきた。

今年7月に発表になった4代目ジムニー(写真はシエラ)。納車まで1年待ちとも言われる「現象」は、スズキの勢いそのものをも表しているのかもしれない。

今3月期のスズキ業績見通しも売上高、利益ともに過去最高を更新することになる。その内容もインドでの好業績や国内での軽自動車回復に加え小型車年販10万台超えに、懸案の2輪車事業の黒字化が含まれている。

スズキの株価は昨年トヨタの1.2倍の上昇率と快進撃を示し2月1日現在で6300円。

スズキは、修会長の口癖だった「田舎の中小企業」から大きく脱皮し世界トップ10に入るグローバル企業に成長した。鈴木俊宏体制による2019年度までの中期経営計画「スズキNEXT100」は、チームスズキとして次の百年を生き抜く方向への仕上げの段階に入る。

2017年にはイグニス(下)がワールド・カー・アワーズ 「2017ワールド・アーバン・カー部門 TOP3」を受賞。今年3月にはスイフトがワールド・カー・アワーズの「2018ワールド・アーバン・カー部門 TOP3」に2年連続で選出されている。こうした「成果」もまた、スズキが世界での存在感を増していることの証だといっていいだろう。


【番外コラム】 スズキの技術を「松・竹・梅」で評価する

(TEXT/国沢光宏)

スズキの技術力はいかほどのものか? 自動車ジャーナリスト国沢光宏が、5つの項目に分け、「松・竹・梅」の3段階で評価を下す。

■自動ブレーキ……

スズキは浮気性らしく、これまでさまざまなタイプの自動ブレーキを採用してきた。ここにきてやっとレーザー+カメラというタイプに落ち着きそうな気配。

ここまで読んで推察できるとおり、スズキの自動ブレーキシステムはすべて独自開発じゃない。部品メーカーがシステムをスズキに提案し「安くしてくれるなら使ってみるよ」。また、現在使われているタイプも、センサーの性能としては発展性ないため、遠くない将来、違うタイプを採用するかもしれません。

ちなみにライバルのダイハツの自動ブレーキと比べれば圧倒的に優れたパフォーマンスを持つ。ホンダには負け。

スズキセーフティサポートは緊急自動ブレーキのほか車種、グレードによって全方位をカメラでカバーするシステムも装備。死角をなくす予防安全にも力を入れている

■ハイブリッド……

スズキがストロングハイブリッドと呼んでいるのは、世の中一般でいえば簡易型ハイブリッドである。ホンダのIMAやスバルと同じく、小さいモーターをエンジンと同軸上に置き、緩加速や低速域での短時間一定速走行程度ができるというもの。しかも部品メーカーからプレゼンされた技術であり、スズキの独自開発ではない。

すでに多くのメーカーが採用をやめていくハイブリッドシステムだということを考えれば、高く評価できる内容じゃありません。参考までに書いておくと、ノートe-POWERのシリーズハイブリッドは、もっと早くからスズキが提案していた技術です。

■軽量化……

スズキで一番「凄い技術ですね!」と感心するのは軽量化である。アルミやカーボン、樹脂に代表される高価な素材を使っていないという点で世界TOPクラスだと思う。軽量素材使っての軽量化、簡単ですから。

スイフトやワゴンRの軽さときたら驚くばかり! それでいてボディ剛性不足を感じるかといえば、まったくなし!

もしかすると衝突安全性で若干ニガ手なモードがあるかもしれないが、このあたりは不明。軽く作れば材料も少なくなるため、クルマ全体のコストまで下がってくるというメリットもある。このまま頑張って軽量化を進めていっていただきたい。

■4WD……

スズキはホンキで雪道性能を追求しようと考えていない。例えば下り坂での制御。アイスバーンでエンジンブレーキをかけた場合、スズキのシステムは前輪にしか作用しない。自転車でいえば前輪だけブレーキかけるようになり不安定。

後輪をつかもうとすると、ひと手間かけなければならず、当然ながらコストアップになってしまう。そいつを嫌ったワケ。

とはいえ普通に使うぶんには滑った時だけ後輪に駆動力を与えるだけで充分だと思う。また、スズキの4WDシステムも自社開発じゃなく部品メーカーからアッセンブリーで供給してもらっている。味つけをスズキでやってます。

スズキ最新の電子制御4WD「ALL GRIP」はオート、スポーツ、スノー、ロックの4つのモードを採用

■ダウンサイズターボ……

正しい評価は先延ばしにしたい。というのもスズキのダウンサイジングターボをキチンとテストしたメディアがベストカーを含め、いまだないからだ。少なくとも1L 3気筒ターボを味見すると、実用燃費と出力でフィットなどの1.3Lエンジンに届いていない。

また、同じ1.4Lターボをスイフトはスポーツエンジンとして使い、エスクードでダウンサイジングターボとして採用している。どちらも中途半端なイメージ。もう少しキッチリと煮詰めておけば評価が上がるかもしれません。今のところ、可もなし不可もなし、といった仕上がりだと考える。

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 軽量化は群を抜いているが、ほかはコストをかけずに標準的な技術を維持しているイメージ。それもスズキらしい!

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