ホンダが生み出した不朽の名車スーパーカブはなぜ圧倒的人気を勝ち得たのか!?


 ホンダは2022年5月19日、「スーパーカブ50」「スーパーカブ50 プロ」「クロスカブ50」 「クロスカブ50・くまモン バージョン」のカラー設定を変更し発売すると発表した。

 スーパーカブの初代モデル「スーパーカブC100」が誕生したのは1958年。本田宗一郎氏のもと、「誰でも扱えるバイク」を目指し開発された。そんなスーパーカブは、販売から60年の2021年末時点で世界累計販売台数が1億台という、とんでもない人気車となっている。

 日本でもアニメ『スーパーカブ』などの人気もあり、若者の認知度が向上するなど追い風もあったが、もともとの地力が強いと言える。現在スーパーカブを愛車にしているという読者も多いことだろう。

 ライバルとなるバイクは多くあったにもかかわらず、なぜスーパーカブはここまで圧倒的な存在になり得たのだろうか!? 今回はスーパーカブの魅力と併せて、語っていきたいと思う。

文/西村直人
写真/HONDA

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■160カ国以上の人々から愛され続けるスーパーカブが持つ独自の強み

2022年5月、カラー設定を変更し発売すると発表されたホンダ スーパーカブ50(グリントウェーブブルーメタリック〈新色〉)

 世界中で1億台以上(2017年10月現在)を生産したホンダの名車「スーパーカブ」。日本を代表するエンジン付きの乗り物であると同時に、シリーズ累計では人類史上、最多販売台数を誇るパーソナルモビリティである。なぜ、スーパーカブが160カ国以上の人々から愛され続けているのか?

 それはとりもなおさず、圧倒的な低燃費性能(1983年発売の「スーパーカブ・スーパーカスタム」180km/Lを達成!)と、ビス1本に至るまでの高い耐久信頼性を保っているからにほかならない。

 1958年に誕生した初代スーパーカブ「C100」から受け継がれているシンプルな車体構成と、すぐに馴染める操作性。そして他を圧倒する低価格(現行モデルは24万7500円~)。

 まさしくヒット商品となるための条件が三位一体となった唯一無二の乗り物である。

 歴代モデルにはそれぞれ特徴があるが、本稿では2012年5月発売の「スーパーカブ50」以降を紹介したい。

 まずはスーパーカブ50(2012年モデル)から。基本的な車体構成は2012年2月に先行デビューを果たしていた原付2種の「スーパーカブ110」と同一だが、タイヤはひと回り細くなり、エンジンは原付1種の枠組みとなるOHC単気筒49ccに換装された。

2012年5月発売のスーパーカブ50

 カタログ値110km/L(30km定地走行テスト値)を誇る低燃費性能を生み出すのは、長きに渡る伝統と最新技術を組み合わせたAA04E型エンジンだ。

 今も昔も低価格がウリのスーパーカブだが、排出ガス規制の強化に伴い先代の後期モデル(2007年)からキャブレターに代わって電子制御燃料噴射装置(以下、FI)を採用し、クリーンな排出ガスと低燃費性能を両立した。

 ちなみに、世界初の4ストローク50ccエンジン用FI搭載車は、2004年にホンダから発売されたスクーター「スマート・Dio Z4」だ。

 Honda Programmed Fuel Injection system(PGM-FI)と呼ばれたFIは、開発目標に「キャブレターの使い勝手を損なわない」という命題があり、そのひとつに「バッテリーが放電し30日間放置した完全放電状態であっても、キックスターターだけでエンジン始動可能」という非常に過酷な条件も含まれていた。

 そのFIの起動には電力が必要で、バッテリーが放電してしまっては必要な電力を得ることができない。唯一の電力獲得方法は、キックスターターのキック動作、つまり運動エネルギーを電気エネルギーに変換することなのだが、キック一発で得られる電力は非常にわずかだ。

 おまけにFI起動のほか、シリンダー内のスパークプラグを点火させなければエンジンは始動しないため実現は容易なことではなかった。

 現在、新車販売されている国産メーカーのバイクにはFIが採用されているが、バッテリーが完全放電、もしくはおおむね8Vの電圧を下回った場合に、キック操作のみでエンジン始動ができるFI搭載モデルは未だに限られている。

 実車はスタイリッシュだ。“ただのビジネスモデルにしておくにはもったいない”と、ホンダもそのあたりは承知の上で、パーソナルユースを意識したカラーバリエーションにはじまり、ファッション性に富んだデザインのキャリアや本革製の収納グッズなどアクセサリーを充実させた。

 それだけでなく、プリロード調整式のリヤショックアブソーバーや歯切れのよい単気筒サウンドを強調するスポーツマフラーなど、機能パーツを車体と同時にリリースしているあたりに、ユーザー層拡大に向けた本気度合を感じる。

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