■各メディアにも取り上げられ今では若年層もカブユーザーに
じつは今から33年前、高校3年生だった私が初めて手にした新車の2輪車が「スーパーカブ90」だった。90とその名が示すとおり排気量が90cc(正確には85cc)で原付2種クラス。初代からの丸目ヘッドライトにスチールフレーム、そして濃緑×オフホワイトのボディカラーはまさしくスーパーカブの王道だ。
詰襟学生服の高校生とスーパーカブとは、はたからは相当のミスマッチに映っていただろうが、アニメーション映画「天気の子」(2019年7月公開)での劇中車をみれば、ささやかながら時代を先取りしていたか?
実際、スーパーカブとのふれあいは想い出深く、なけなしのバイト代から捻出したガソリン代で朝から晩までしがみ付いていた日々は楽しく、痛快だった。
ハンドル右側スイッチによるウインカー操作(上で右折、下で左折)に最初は戸惑ったが、「左手で重ねた蕎麦のせいろ支え、右手で運転」という出前スタイルに重宝されたと聴けば納得だった。
燃費数値もよく一桁国道を走る、とことこツーリングでは70km/L以上(当時のカタログ値は50km/hの定値走行試験で80km/L)をコンスタントに記録するなど、リアルワールドでエコだった。
2017年10月、スーパーカブはモデルチェンジを敢行し現在に至る。同時に生産拠点を先代の中国から、二輪車のマザー工場である熊本製作所に戻した。再びメイド・イン・ジャパンになったのだ。
その新型に試乗した。キック一発始動がスーパーカブのセールスポイントだが、あえてスマートにセルボタンでエンジンを始動させてみる。
「カナカナッ、カナカナッ」と囁くエンジン音は、筆者の愛車でもあったキャブレター時代のそれからすると耳に届くメカニカルノイズは30%程度減っている。おまけにアイドリング時の鼓動もマイルドだ。
2段クラッチシステムを備えるリターン(停止時のみロータリー)式4速ミッションのチェンジペダルを前に一段踏み込み、1速へシフトする。スロットルを多めに捻ってみると、わずか3秒ほどで「ビィーンッ!」とエンジンはけたたましい雄叫びを上げる。
この時、速度にしてようやく15km/h程度なのだが、間髪入れずにスロットルを全閉し2速へシフトアップし、再びスロットルを全開にすることで、日中の交通量の多いビジネス街でも流れにもちゃんと乗ることができた。
ともすると慌ただしいと感じられる一連のシフト操作だが、3.7ps/0.39kgmの小さなエンジンを使い切ることもスーパーカブの醍醐味なのだ。
驚いたのが拍子抜けするほどあっけなく2速へシフトアップできたことだ。
スーパーカブに乗ったことのある方ならおわかりいただけるだろうが、クラッチレバーのないスーパーカブ系のリターン式には独特のミッションタッチがあって、エンジン回転数をきちんと合わせてギヤをシンクロさせないと変速時に大きなショックを伴う。
またシフトダウン時は、チェンジペダルを後ろへ一段踏み込んだニュートラル状態のままスロットルを開けて回転合わせないとスムースなシフトダウンができなかった。それが2段クラッチシステムのおかげで操作性が劇的に向上した。
発進と変速にそれぞれ独立したクラッチ機構を備えることで、変速ショックの大幅な減少と鋭い発進加速力の両立を成し遂げたのだ。
トップギヤとなる4速は巡航型のギヤ比なので低回転域を保つ。よってストップ&ゴーの少ない郊外をゆったり流せば、カタログ燃費(クラス1のWLTC値69.4km/L)に近づける。
原付1種という日本独自の規格の中で活躍してきたスーパーカブだが、2012年モデルではグローバルでの生産・販売に向けボディは若干大きくなった。
2017年以降の現行モデルはメイド・イン・ジャパンに回帰し、初代をイメージさせるデザインを取り戻しながら、丸眼LEDヘッドライトの採用や各部の軽量化なども行っている。
「いいものを早く、安く、低炭素でお客様にお届けする」。これはホンダが2010年に掲げた2020年に向けたスローガンだ。2030年代に向けては間違いなく電動化の波がスーパーカブにまで及ぶだろう。電動スーパーカブ、登場が待ち遠しいぞ!
【画像ギャラリー】ハンドルを握ればいつだって夢旅人!! 世界中で愛されるスーパーカブがお色直し!!(13枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方