■解決しつつあるFFの弱点も前後重要バランスはFRが圧倒的有利
だが、ぶっちゃけた話、3つの欠点は相当解決されつつある。確かにFR車のが厳密にステアリングは軽めで、フィールが繊細なものは多い。しかしステアリングフィールはボディ剛性やステアリング回りの剛性の影響も大きく、FF車でもクリアでシャープなクルマはある。
なにより微妙なステアリング反力に至っては気付かない人も多く、まさしく天然素材の無化調出汁と化学調味料の出汁の違いで気にしない人はまったく気にしない。今ラーメンなどで無化調をうたうものは多いが、秘かに化学調味料が含まれているケースは多々ある。
一番解決が難しいのはおそらく前後重量バランスだが、BMWのFF系を見ても確かに柔らかくて快適な乗り心地を得るのは難しいが、硬めで快適なものにすれば問題はない。個人的には真の高級乗用車以外は必要ない気もする。
さらに言うとご存知いま流行りの電動化の影響も大きく、将来エンジンがなくなり、すべてがバッテリーEV化すると課題はなくなる。
モーターはエンジンほど長くも重くもないし、問題はデカくて重いバッテリーだけなので基本床下収納にするしかなくFF車、FR車の違いは消え去る。走行安定が欲しければフロント駆動、楽しさが欲しければリア駆動にすればいいだけだ。
■FR=いいクルマはデザインが重要!? FRの価値はCX-60で決まる可能性も
ただマツダCX-60がまさにその答えだが、現状バッテリーEV化があと数年で完了するとは考えられない。先進国中心に少なくともあと10年、あるいは15年、発展途上国も含めると20年はエンジン搭載車が作り続けられるだろう。
その間このFR/FR論争はまだ続くと思うのだが、実は最大の違いは走り味やスペース配分以上にデザインだという話がある。
フロントノーズが長く、オーバーハングが短く、キャビンが後ろに配置されたある種動物的なFR固有のフォルムが、一部の古典的自動車価値、美意識に結びつき、FR車=いいクルマであり、高級車であり、カッコいいという固定観念から逃れられなくなっているという説だ。
秘かに小沢はこの執着が一番ガンコで根強いのではないかと思っている。実際問題ロールスロイス、ベントレー、メルセデス・ベンツ、BMWなどの世界的な高級車のフラッグシップはみな特有のFRフォルムで固められている。
かたやスーパーカーは平たい三角屋根のミッドシップフォルム=一流の本物という認識が人類全体になんとなく残っている。それは先進国から途上国、年配から小さい子供までそうだ。
それは足長くて頭小さく、胸とオシリが大きめの女性が美しいと感じるようなレベルで人類に浸透し、広く認識されていたならばどうだろう。結局FR的なもの、FRの走り味以上にこのカタチや類型がカッコいい!と認識されていたならば?
だとするとEV化されてもこのFR的フォルムであり、FR的価値観は残るのかもしれない。
マツダがそこまで考えているか知らないが、もし今後CX-60が大方のEV推進派の声にめげず大成功したならば、それはエンジン車の魅力以上に、FR的価値観のパワーを正しく受け止め、延命させたマツダ経営陣の英断となるのかもしれない。
はたしてFR価値観でありCX-60人気がどこまで続くのか。心して見続けていきたいと思う。
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