世界を取り巻く社会情勢が刻々と変化するなか、気になってくるのは我が国が有する防衛能力。
日本の防衛費をめぐっては、1976年の閣議決定で国内総生産(GDP)比の1%を超えないとしていたが、その後の1986年にこれが撤廃された。
しかしその後も今日まで1%台で推移している日本の防衛費。世界各国の軍事費と比較しても対GDP比は最も低いながら、2020年度ベースでは5兆2620億円と世界ランク9位だ。
「他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」という陸上自衛隊の防衛能力とは、いったいどんなものなのだろうか? 写真と詳しい解説でご紹介しよう。
●2020年 世界の軍事費上位10カ国
・1位…米国
・2位…中国
・3位…インド
・4位…ロシア
・5位…英国
・6位…サウジアラビア
・7位…ドイツ
・8位…フランス
・9位…日本
・10位…韓国
※本稿は2022年5月のものです
文・写真/工藤 直通
初出/ベストカー2022年6月10日号
■四方を海に囲まれているからこその備え
四方を海に囲まれる日本の平和と安全を保つため、我が国を防衛する組織である陸海空自衛隊。
敵の上陸阻止や、化学兵器テロなどに対抗する装備をはじめ、野戦、市街地戦闘などさまざまな事態に即応するために、強靭な防衛力を維持することは我が国にとって永遠の課題であろう。
日本の防衛費は、1988年には3兆6700億円だったものが、1990年代には4兆円を超えた。2014年度以降は8年連続で増加を続け、今年度の当初予算は5兆4000億円となった。
しかし、そのおよそ4割強は14万人の陸上兵力への人件・糧食費が占め、戦車や戦闘機の購入やその維持費とほぼ同額という事実もある。
昨今、政府・自民党はさらなる防衛力強化を目指し、防衛費の対GDP比を2%にすることを打ち出している。これは世界の軍事費ランキングで3位にも達する額だ。
2021年度の陸海空防衛費の分配比は、陸自35.6%、海自25.5%、空自21.9%であるが、陸自の戦車・装甲車1560輌、空自933機、海自137隻(いずれも2021年3月時点)という数値からも比率は順当であろう。
これら多額の防衛費は、防衛力整備や陸海空自衛隊の維持運営経費、基地周辺策費などが含まれるほか、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)経費、米軍再編関係経費も含まれ、「防衛関係費」として位置づけられる。
ハイブリッド戦など、より重大な事態へと急速に発展していくリスクに対する抑止力として、自衛隊の防衛力は必要不可欠なのである。
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