■欧米の自動車文化に溶け込むために……
ここまでNIOが「肉食っぷり」をアピールしてきたのには、もちろん理由がある。
中国の次世代自動車開発には国が大きく関与しており、特にこれから熾烈さを増すであろう中国国内の生き残り競争では、第一汽車や東風汽車といった国営企業が圧倒的に有利だといわれている。
NIOは、この競争を避けるため、当初からグローバルな舞台に打って出たわけだが、中国生まれの新興メーカーが、欧米の自動車文化のなかで存在感を得ることは極めてハードルが高い。
そこでNIOは、欧米の自動車文化への連帯を示す意味で、フォーミュラEに参戦し、ニュルでのタイムアタックに挑んだわけだ。
実際その効果は絶大で、NIOは創業以来、世界市場で2000億円以上もの資金調達に成功した。
活動拠点も世界各地に広がり、今や本拠地の上海のほか、サンノゼ(米)、ミュンヘン(独)、ロンドン(英)などで5000名もの従業員が働いているという。
■初期の肉食系から本来のエコロジー系に
現在のNIOは、世界市場参入に必要だった肉食性を弱め、本来の理念だったエコロジカルなイメージへと軸足を移しているように思える。
そのシンボルともいえるのが、昨年発表され、最近中国での納車が始まったSUVモデル「ES8」だ。
このES8、デザインや開発はミュンヘンで行われたというが、実際、中国ブランドとは思えない上質なSUVに仕上がっている。652psを誇るデュアルモーターや、シックなナッパレザー内装も魅力なのだが、それ以上に、未来を見据えた先進的な装備が目を引く。
例えばカメラやミリ波レーダー、超音波センサーなど、計23個のセンサーを使った最新の運転支援システムや、世界初の車載AI「NOMI」、急速充電に加えて3分で交換が可能な新世代のバッテリーなど、もはや日本や欧米の最新モデルと比べてもまったく見劣りしない出来栄えを誇っているのだ。ちなみに補助金を考慮しない中国での価格は44万8000元(およそ730万円)からである。
EV業界では、「次のテスラはどこか?」という話題がしばしば取り上げられる。緻密な戦略と高度な生産能力を持つNIOは、その最有力候補といえる1社だろう。
〈NIOの基本データ〉
創業年:2014年
所在地:
中国・上海
創業者:
ウィリアム・リー(中国名「李斌」)
社名の由来:
NIOの中国名「蔚来(ウェイライ)」は「青空の訪れ」の意味。テクノロジーによって問題を乗り越え、明るい未来を実現しようという理念に基づく
〈10秒でわかるNIO〉
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2014年に上海で創業した独立系EVメーカー。創業者はウィリアム・リー
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当初から世界市場を目指し、今やテスラ最大のライバルといわれる
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フォーミュラE参戦やニュルブルクリンクのタイム更新など「走り」に積極的
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