トップに据えたEVカー「EP9」の写真を見たとき、隣にいた編集者から「お、かっこいい」という声があがった。
そう、かっこいいのだ。あとで出てくるSUV「ES8」など、個人的には海外の並みいる高級SUVたちにも負けてないのではないかと思えるような質感、デザインに見えてしまう。
かつて(と、もはやいうべきなのだろうか?)「パクリ大国」と呼ばれた中国のメーカーから、よもや、こんなに早くこんなクルマたちが出てこようとは、中国の方が読まれたら本当に申し訳ないけども、夢にも思わなかった。
というわけで今回は、テスラ最大のライバルといわれるEVメーカー、フォーミュラEや(EVなのに)ニュルブルクリンクでも暴れまわる新興メーカーNIO(ニーオ)を解説しよう!
※本稿は2018年8月のものです
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年9月26日号
■「肉食系」の新興EVメーカー
EVというと、どことなく草食系のイメージがあるけれど、なかには意外な「肉食系」もいる。その代表例が、今回紹介する中国の独立系EVメーカー「NIO(ニーオ)」だ。
NIOは2014年、「NextEV(中国名「汽車」)」という名で上海に設立された。創業者は自動車業界向けのインターネットサービスを手がけていた実業家、ウィリアム・リー(中国名「李斌」)氏だが、共同設立者には、かつてマツダでロータリーエンジンの延命に尽力した故マーティン・リーチ氏も名を連ねていた。
そのNextEVが、もともと社内のプロジェクト名だったネーミングを社名とすることに決め、2017年「NIO」が誕生したのだ。
■フォーミュラEの初代チャンピオンに!
では、なぜNIOが肉食系と呼ばれるのか。それはEVメーカーがあまり得意としない「速さ」や「スピード」といったテーマを追い続けてきたためだ。
口火を切ったのは、EVのF1ともいわれるフォーミュラーE。NIO(当時はNextEV)は創業するやいなや、テンセントやバイドゥ、シャオミ、レノボといった中国の名だたる企業から膨大な資金を集めたのだが、その資金でいきなり、「チャイナレーシング」を名乗って開幕1年目のフォーミュラEに参戦した。
驚いたのはその結末だ。NextEVは、ファーストドライバーとしてネルソン・ピケ・Jrを起用するや、11戦中2勝を挙げて、フォーミュラEの初代ドライバーズチャンピオンまで勝ち取ってしまったのである。
■最速記録も獲得!
この活躍で、NextEVの名は世界中に広がることになったのだが、我々クルマ好きにとってはさらなる衝撃が待っていた。
2017年5月、NextEVはニュルブルクリンクでEVスポーツカー「EP9」のタイムアタックを行う。
結果、それまでランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテが持っていた最速タイム、6分52秒01を6秒以上も上回る6分45秒90という記録を叩き出し、なんと市販ロードカーの世界記録を打ち立ててしまったのだ(その後マクラーレンが記録を更新している)。
このEP9、250のモーターを4輪に配置したいわゆる「メガEV(出力1メガワット=1360ps)」のスーパーEVなのだが、フランスのポールリカールやイギリス、グッドウッドのヒルクライムコースでも最速タイムを更新し、EV史に名を残すクルマとなってしまった。
ちなみに生産台数は6台、価格は120万ドル(およそ1億3300万円)というお大尽ぶりである。
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