懸念は「個性」が少ないこと
このクラスのSUVは、ボディサイズにややゆとりがあるため、コンパクトクラスに比べてパッケージ性能とデザイン性のバランスがとりやすい。CX-5がその良い例で、マツダが本当に表現したいと思えるデザインがよく反映されていると感じる。
ZR-Vのコンセプトは「異彩解放」。ユーザーの個性を解き放ち、お気に入りの一張羅のように気分を高めるクルマを目指して開発されたという。となると、ZR-Vには、しっかりと所有欲を満たしてくれる存在感のあるデザインと、ディテール、「ここを見て欲しい」という個性が求められる。
しかし、ZR-Vは全体的にエレガントで上質な雰囲気ではあるものの、強く惹かれるデザイン要素に乏しい。フロントのバーチカルグリルがポイントではあるが、マセラティのレヴァンテでも同様の手法が取られていたため特に目新しさは感じられない。
リアの眺めも同様で、率直な意見を述べれば、コンビネーションランプの形状もこれといって個性がなく、上部に向かって絞り込まれたデザインとの組み合わせは、ひと昔前の雰囲気すら感じられてしまう。日本人の美意識にとことん寄り添ってデザインを磨き抜いたハリアーに比べると、エレガントさや先進性で上回るとはいえない。
パーツごとに見れば上質な雰囲気もあるのだが、どこか他のメーカーのデザインで見たことがあるような造形の寄せ集めに思えてしまう(ヴェゼルも同様だった)。似せるならば、自社の名車、初代NSXやS2000あたりがよかったのに、と思ってしまう。
加えて、パワートレインもZR-Vのために新開発されたものはなく、「これがあるからZR-Vが欲しい」につながる要素はあまりない。もちろん走りや燃費が良いことは容易に想像できるが、エクストレイルのVCターボ+e-POWERや、「コスパの高いPHEV」で人気を獲得したアウトランダーに比べると、優位性は少ないといわざるを得ない。
ネガティブな要素をいろいろ挙げてしまったが、クルマは実車をみないとわからないこともある。また、ホンダのSUVラインアップに欲しいボディサイズとパッケージングの登場は、多くのユーザーにとって嬉しいはずだ。
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ZR-Vは、北米ではホンダブランドの最小SUVに位置しており(先代まではヴェゼルがその位置にあったがこの新型からZR-Vが担う)、2022年6月の発売から1カ月で受注約6000台を突破したと発表された。北米で支持されているポイントのひとつに価格があり、もし北米仕様の23650ドル(約315万円)~27450ドル(約366万円)と近い価格帯で日本市場でも販売できれば、現在でヒットしているRAV4やカローラクロスと充分勝負できるモデルとなるだろう。
日本の自動車メーカーは、グローバルでは多くのラインアップを抱えているものの、日本市場には導入していないモデルがかなり多い。そんな中でZR-Vが導入されるというのは嬉しいニュースだ。ZR-Vは、発売に先駆け、先行予約の受付を9月に開始する予定とのこと。ホンダがZR-Vの魅力をどのように訴求していくのか、今後の動向には大いに注目だ。
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