「3つのパワートレーンを1台で」 ホンダの新発想
ホンダのプラグインハイブリッド車(PHV)であるクラリティPHEVは、燃料電池車(FCV)のクラリティ・フューエルセルと、電気自動車(EV)のクラリティ・エレクトリックと同じ車体を使う。
FCVとEVの普及は、すぐには見通せない。水素ステーションの整備が進まないのと、集合住宅への普通充電設備も課題を抱えているためだ。そこでホンダは、一台のプラットフォームでFCVとEVとPHEVを成り立たせることを考えた。
それら3車種のうち、クラリティPHEVが、もっとも効率よくパッケージングされている。エンジンルームにはエンジンとモーターと制御機器がびっしり搭載され、荷室は十分な広さが確保されている。
かたや、FCVとEVは、エンジンルームにモーターしかないため地面が透けて見えるほどで、逆に荷室には水素タンクや余分なバッテリーが搭載されることにより、容量を減らしている。結果、クラリティのプラットフォームと車体は、PHEVに最適な構造となっている。
そのうえで、クラリティPHEVは後席の居住性にも目が配られており、後席足元の床を低くし、足を下へおろして正しく座る姿勢がとれるようになっている。
これは、PHEVとしては高性能な約100kmに及ぶモーター走行距離を実現したリチウムイオンバッテリーを、前席と後席下に集中的に搭載し、後席足元に配置しないようにしたためだ。
他のFCVやEVでは、燃料電池スタックやリチウムイオンバッテリーを床下に配置し、低重心化をはかる一方で、後席足元が高くなり、やや膝を抱える着座姿勢となりやすい。
そこを、クラリティPHEVは回避し、正しく座らせ、乗員すべてが快適な移動をできるように配慮したのである。同時に、リチウムイオンバッテリーは液冷却することにより、高出力と寿命を両立している。
パッケージングが変えるのは“広さ”だけではない
最後に、現行のダイハツ ミライースは、歴代2代目となるが、この新型がDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の原点と位置付けられ、新プラットフォームを採用している。
これを機に、実は運転姿勢が見直され、軽自動車や小型車ではなかなか採用されないステアリングのテレスコピック機構を用いなくても、運転姿勢をより適切にとれる運転席を実現した。
一般的に、軽自動車や小型車は、小柄な人でも運転しやすいように運転席が配置され、その結果やや背のある人の場合はステアリング位置に座席を合わせるとペダルが近すぎることになる。それがペダル踏み間違い事故を誘発している可能性がある。
一方で、原価の問題からステアリング調節にチルト機構はあってもテレスコピックは採用されず、適切な運転姿勢をとれないまま運転している人もいるはずだ。
現行の2代目ミライースもチルト機構しか付かないが、それでも運転姿勢が大きく改善された。完璧とまではいかないものの、これによりペダル踏み間違いの可能性を下げることに貢献しているといえる。
以上のように、パッケージングは室内の有効利用による利便性向上に止まらず、ユニバーサルデザインや運転姿勢にまで影響を及ぼす重要な指標である。
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