サイズ以上の圧倒的室内空間! 日本が誇る超スペース効率車の知恵と技術


シエンタの低床化に絶版車で得た発想と技術あり!

2015年登場の現行型、2代目シエンタ。売れ筋コンパクトより“少し大きい”サイズ感で3列シート7人乗りを成立させた優れたパッケージングで高い人気を誇る

 同じように低床を実現したのは、2015年に2代目へモデルチェンジしたトヨタのシエンタだ。

 5ナンバー車でありながら最大7人乗りできる3列シートを備え、その3列目は、折りたたんで前方へ送り込むと2列目の座席下に収まり、荷室床面積をほぼ平らな状態で拡大できる。

 また、2列目の座席を折りたたんで前方へ倒し込めるので、さらに荷室を広げられるし、3列目への乗降もしやすくなる。

 3列目の座席を2列目下へ送り込むたたみ込み方は、1999年のファンカーゴで後席を倒し込んで低床の荷室面積を広げた実績があり、ファンカーゴ自体は1世代のみで終わってしまったが、その発想と技術が活きた例といえるだろう。

シエンタの室内。このように、3列シートを2列目シートの座席下に収まるシートアレンジは低床化技術の成果

 シエンタの低床の実現は、通常の小型ミニバンとしての利便性に止まらず、福祉車両としての機能も高めている。

 低床の床が2列目の座席近くまで得られることを活かし、後ろのハッチバックを開け車椅子を乗せたとき、助手席側の1.5列目まで車椅子を前進して止めることができる。

 これにより、車椅子で乗車する人の乗り心地がより快適になるうえ、運転者が少し振り向けば顔を見ることができ、車椅子で同乗する人の様子を確認したり、会話を弾ませたりしやすくできる。

 トヨタは、福祉車両の“普通のクルマ化”に取り組んでおり、車椅子での快適さと合わせ、車椅子を使用しないときに通常の5人乗りができるようシエンタを仕立てている。パッケージングを極めると、福祉を視野にしたユニバーサルデザインを実現できる好例といえる。

「3つのパワートレーンを1台で」 ホンダの新発想

クラリティPHEV(奥)とクラリティEV(手前)。このほか、クラリティFCと併せて3つのパワートレーンを1車種で実現しているのが大きな特徴だ

 ホンダのプラグインハイブリッド車(PHV)であるクラリティPHEVは、燃料電池車(FCV)のクラリティ・フューエルセルと、電気自動車(EV)のクラリティ・エレクトリックと同じ車体を使う。

 FCVとEVの普及は、すぐには見通せない。水素ステーションの整備が進まないのと、集合住宅への普通充電設備も課題を抱えているためだ。そこでホンダは、一台のプラットフォームでFCVとEVとPHEVを成り立たせることを考えた。

 それら3車種のうち、クラリティPHEVが、もっとも効率よくパッケージングされている。エンジンルームにはエンジンとモーターと制御機器がびっしり搭載され、荷室は十分な広さが確保されている。

 かたや、FCVとEVは、エンジンルームにモーターしかないため地面が透けて見えるほどで、逆に荷室には水素タンクや余分なバッテリーが搭載されることにより、容量を減らしている。結果、クラリティのプラットフォームと車体は、PHEVに最適な構造となっている。

 そのうえで、クラリティPHEVは後席の居住性にも目が配られており、後席足元の床を低くし、足を下へおろして正しく座る姿勢がとれるようになっている。

 これは、PHEVとしては高性能な約100kmに及ぶモーター走行距離を実現したリチウムイオンバッテリーを、前席と後席下に集中的に搭載し、後席足元に配置しないようにしたためだ。

 他のFCVやEVでは、燃料電池スタックやリチウムイオンバッテリーを床下に配置し、低重心化をはかる一方で、後席足元が高くなり、やや膝を抱える着座姿勢となりやすい。

 そこを、クラリティPHEVは回避し、正しく座らせ、乗員すべてが快適な移動をできるように配慮したのである。同時に、リチウムイオンバッテリーは液冷却することにより、高出力と寿命を両立している。

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