毎年多くの新車が登場する一方、ひっそりとその生涯を終え、消えてゆく車もある。
プリウスやフィットのように人気車に定着したモデルもあるが、カローラでさえ全盛期と比べて台数を落していることからもわかるとおり、一定以上の人気を維持し続ける車種は極めて少ない。そして、多くのモデルが一度も人気車になれないまま世の中から姿を消してゆく。
本稿に登場する車たちは、その多くが一代限りで消滅したモデルばかり。しかし、一瞬の輝きは凄かった。
そんな彗星の如く消えていった人気車に敬意を表しつつ、その波乱万丈な“車生”を振り返る。
文:永田恵一
写真:編集部、Honda
最盛期は月6000台売れたホンダ S-MX
1996年に登場したS-MXは当時ホンダが1994年の初代オデッセイから、初代CR-V、初代ステップワゴンと続いた「クリエイティブ・ムーバー」と呼ばれるRV戦略第4弾。
シビックをベースに、現在のフリード+のようなコンパクト2列シートミニバンを新しい形のデートカーに仕立てたモデルだった。
S-MXが持っていたデートカーの要素は、前席がコラムシフトのベンチシートでフラットになるシートや、ボックスティッシュがそのまま入る収納スペースがあるなど、故・徳大寺先生の言葉を借りれば「動くラブホテル」のようだった。
また、最低地上高を下げたスタイリッシュなローダウン仕様があったほか、全長4m以下にも関わらず、広い室内や使い勝手の良さといった実用性の高さも持ち合わせており、登場から1年近くは月6000台という好調な販売をキープした。
その後も販売は堅調だったものの、2000年にS-MXより1クラス下でかなり近いコンセプトを持つトヨタ bBが登場すると、前述したウィッシュとストリームのようにS-MXの販売も一気に低迷。
この種の車は流行商品であることや、1クラス下のbBの価格は当然ながらS-MXより安かったこともあり、2002年に絶版となった。
“密かな人気車”デュアリスも一代で消滅
2007年に登場したデュアリスは、ミドルSUVには当時あまりなかった、オンロードでの走りを重視したシティ派SUVであった。
特に初期モデルは英国生産で、走りに重要なダンパーやシートなどに本場、欧州製のパーツを使っていたこともあり、その走りは大変上質だった。
デュアリスは発売当初から「日本人には分かりにくいクルマなのでは?」という評価も少なかったが、フタを開けてみると登場時の月販目標台数2000台に対し、2007年は月約2500台、2008年もほぼ2000台と目標をクリアし、「クルマの内容を重視する日本人も少なくないのだ」と感じたほどだった。
だが、2007年12月生産分から日本製となり、走りが普通の日本車のようになってしまった。
それが口コミで広がってしまったのか、あるいは1クラス下のジュークに食われたのが原因だったのか、2009年に入ると販売は三ケタに急降下。
デュアリスは、同クラスのエクストレイルが2013年12月にフルモデルチェンジしたタイミングで、残念ながら日本仕様としては姿を消してしまった。
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