エンジンかけたら複雑骨折!? 登場から130年でクルマを便利にした技術10選

その6:驚異的な高出力を可能にしたターボチャージャー

クルマが便利で快適になったのはコイツのおかげ! 130年の間に生まれたすごい自動車技術10選
ターボチャージャー。もともとは希薄な空気を利用する飛行機のために生まれた(Maksym Yemelyanov@Adobestock)

 ターボチャージャーやスーパーチャージャーも航空機で最初に使われた。いかに高く上昇できるかが、航空機の性能の良し悪しにつながる。

 一方、高度が上がれば空気は薄くなり、馬力は上がらなくなる。そこで、濃い空気をエンジンに送り込む策として考えられたのが、ターボチャージャーやスーパーチャージャーだ。過給することにより、空気を圧縮し、密度の高い空気に燃料を吹き込むことで、空高く航空機が飛べるようになったのである。

 この技術がクルマにも適用され、高性能エンジンが誕生する。ターボチャージャーを搭載したドイツのBMW2002ターボが発表されたのは1973年、ポルシェ911ターボが発売されたのは1975年だった。日本でも、1979年の日産セドリック/グロリアにターボ車が加わった。

その7:実用性とスポーツ性を両立させたホンダVTEC

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2001年型インテグラに搭載された2L i-VTECエンジン

 エンジンを高性能化させる技術として、ホンダが開発したのがVTEC(Variable valve Timing and lift Electronic Control system)と名付けられた可変バルブタイミング&リフト機構である。

 エンジンに吸い込まれる空気(混合気)は、エンジン回転数によって流速が異なる。低回転では遅く、高回転では速い。速度の違う空気を、エンジン内に十分に送り込むには、回転が低いうちは長く吸気バルブを開け、回転が上がったときにはいつまでもバルブを開けたままにしていれば、せっかく吸い込んだ空気が開いているバルブから抜け出してしまう。

 そこで、低回転と高回転でバルブの開く時間と、閉じはじめる時期を変えるのが理想だ。それを、一つのカムシャフトで同時に実現したのがVTECである。カムシャフトには、低速用と高速用の二つのカムがついており、それをエンジン回転数によって切り替える。

 VTECが最初に採用されたのは、1989年のインテグラだ。こうして、日常的には低速トルクのある実用エンジンの特性で、高回転へ回せばあたかもスポーツカー用エンジンのように伸びのいい加速を味わえた。この技術はのちに、燃費を向上させるためにも活用された。

その8:面倒なシフト操作を不要にしたオートマチック・トランスミッション

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面倒なクラッチ操作やシフトワークを無用としたオートマチックトランスミッション(あんみつ姫@Adobestock)

 エンジン車に欠かせないのが、変速機だ。逆に電気自動車(EV)には必ずしも必要ない。

 自動で変速する装置として世界的に普及したのは、クラッチの代わりにトルクコンバーターを用いた方式だ。1940年に米国GMのオールズモビルに注文装備として設定された。それはトルクコンバーターと遊星歯車を使う方式だが、遊星歯車による変速自体は、英国で1900年に採用例がある。ランチェスターという自動車メーカーだ。

 別の方法として、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は、マニュアル変速機に2つのクラッチを取り付け自動変速化したDCT(VWはDSGと呼んだ)を5代目ゴルフに設定した。

 一方、歯車を使わない自動変速機がCVTだ。2つのプーリーとベルトを利用し、無段階で変速する。クルマに最初に使ったのは、1958年のオランダのDAFである。国産車では、1987年にスバル・ジャスティで注文装備され、続いて日産マーチの2代目でも採用された。

その9:右足をアクセルから開放したクルーズ・コントロール

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巡航時の右足をアクセルワークから開放するクルーズ・コントロール(Thanavut@Adobestock)

 クルマを楽に走らせる機能として、クローズコントロールがある。クルーズコントロールが最初に採用されたのは、米国のクライスラーだ(現在はステランティスの一角)。1958年のことである。広大な米国の大陸を走るうえで、延々と続く直線道路でいかに楽に走行し続けるかという要求から生まれた。

 国産車では1964年に、2代目トヨペットクラウンのV型8気筒エンジン搭載車であるクラウンエイトに、注文装備として設定された。それでも、長い間上級車種での採用に止まったが、広く採用されるようになるのは、クルマの安全向上のための運転支援技術の一つであるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が広まってからのことになる。

その10:走破性を劇的に高めた4輪駆動システム

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4輪駆動による悪路走破性は古くから注目されていた(1944年式ウィリスジープ)

 SUV(スポーツ多目的車)人気によって、4輪駆動を選択肢とするのがあたりまえになった。しかし、発端となるのはオランダのスパイカーというメーカーの、1903年のレース車だった。エンジンの力を速さにつなげるには、2輪より4輪のほうが効果的と考えたのだ。

 当時のタイヤは現在のようなラジアル構造ではなく、グリップ力が低かった。次々に出力を高めるエンジンに対し、グリップはもちろん耐久性も追いつかず、戦前のレース車ではアクセルを踏むとすぐに空転し、パンクが相次いだとも伝えられる。グリップ不足によるタイヤの空転は、未舗装路でも起こりやすい。そこで米国ジープなど悪路走破を第一するクルマも4輪駆動となり、英国のランドローバーなども名を馳せることになる。

 その後、再び舗装路での4輪駆動の利点を知らしめたのは、1980年のアウディ・クワトロであった。スバルも、レオーネのバンで4輪駆動に取り組み、のちにオール・ホイール・ドライブ(AWD)の魅力をスバルは発揮しはじめる。いまは前輪駆動車の後輪側に、モーター駆動を取り付けることによって簡便に4輪駆動化できる時代にもなっている。

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