比亜迪(BYD)/欧州市場を意識したEVトラックの完成度!
BYDは、以前から欧州でEVバスを販売してきたが、今秋からEV乗用車の導入をスタート、そして今回のIAAでは、欧州市場向けに開発したとされるEVトラックの公開へ進んできたわけで、市場参入のステップがうかがえそうな動きである。
IAAで欧州デビューを果たしたトラックは、GVW7.5トン小型EVトラックの「ETM6」と、GVW19トン大型EVトラック「ETH8」の2台。キャブのエクステリアそのものは、すでに中国国内で発売されているものとほぼ同じである。
「ETM6」は、GVW7.5トン・全幅2.0m車という小型トラックでも大きめの車格のクルマで、キャブ付シャシー状態の最大積載量は3.8トン、航続距離は200kmを確保するという。
個性的なキャブのデザインは、欧州メーカーで乗用車のデザイナーとして活躍してきたヴォルフガング・エッガー氏(現・比亜迪デザインダイレクター)によるもので、コンパクトな印象を与えるが、実際の車格は前述のとおりである。
BYD独自の容量126kWhリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池、5in1コントローラユニット(モーター制御・分電盤・DC-DCコンバータ・ステアリング制御・エアコンプレッサを一体化)、最高出力203ps・最大トルク550Nmのeアクスル(モーター組込式駆動軸)、水冷式バッテリー温度管理システム、充電率(SOC)20%→100%まで1時間の急速充電システムなど、EVメーカー(実は内燃エンジン車も生産しているが)として評価を得てきただけに、そのスペックは優秀である。
「ETH8」は、GVW19トン車は2軸4×2シャシーで、キャブ付シャシー状態の最大積載量は11.2トン、航続距離は200kmとする。
「Xフェイス」と呼ばれるデザインテーマを採り入れたキャブだが、基本的なムードはETM6と共通で、やはり実際の車格のイメージとは少し離れた印象がある。しかし内装の質感の高さは想像以上で、ドライバーの快適性を重視する欧州市場を意識していることが、十分にうかがえるものだった。ショーモデルだけの特別仕立ての可能性もあるが、10年前の中国製トラックと比べるともはや別次元である。
最高出力248ps・最大トルク450Nmのeアクスルを装備してプロペラシャフトを廃しており、LFP電池パック8個をシャシーフレームの中央(サイドレール間)と左右に搭載、総容量は255kWhに達する。SOC20%→100%までの急速充電に要する時間は2時間だ。
なお、BYDでは、次世代リン酸鉄リチウムイオン電池技術として話題の「ブレードバッテリー」を搭載する、大型EV路線バス向けの新開発プラットフォーム・コンセプトもIAAで発表している。
徐工(XCMG)/EU型式認証を取得した大型EVトラックも!
徐工集団は中国の大手建機メーカーグループの一つだが、傘下に大型トラックメーカー・徐工汽車(通称・徐工重貨)を所有(もともと系列外の地方トラックメーカーを買収)しており、大型セミトラクタや大型トラックシャシーを「漢風」ブランドで供給している。
出品したのは大型トラック3台で、そのうち2台がバッテリーEVである。実は、プレスデー時点ではまだブース設営中だったため見られなかったのが、中国国内で実証試験が進められている高電圧バッテリー交換システムの縮尺モデル展示で、全体では特装車のBEV化を、バッテリー交換システムとともに提案する意図があったようである。
まず、大型EVトラックの1台が「E5エレクトリックミキサトラック」だ。「漢風P5」GVW31トン・8×4シャシーをベースに、容量282kWhのCATL製LFP電池をキャブバックに設置、連続出力1563ps・最高出力3263ps(この数値はリダクションギヤで増幅した値とみられ、モーター単体のスペックは連続出力383ps・最高出力550ps)のモーターを搭載してBEV化した上で、独・シュヴィンク社製の電動油圧ユニット(モーターにより油圧ポンプを駆動)と徐工製ミキサードラム(容量12立方メートル)を架装し、フル電動ミキサ車として仕上げたものである。
もう1台の大型EVトラックが「E7エレクトリックトラクタ」連結総重量33トン・4×2セミトラクタで、同社によると「EU WVTA認証を取得した初の中国メーカー製4×2トラクタ」とのことで、EU域内で販売可能になったとしている。
E5ミキサと同じく容量282kWhのCATL製LFP電池をキャブバックに搭載、こちらはモーターの連続出力383ps・最高出力550psとモーター単体の数値が掲示されており、E5ミキサでは未公表だった航続距離も246kmとしている。
なお、中国市場向けには、6×4セミトラクタEV「漢風E7」が製品化されているが、E7エレクトリックトラクタのキャブデザインは、基本的にそれと同じものだった。また、架装していた第5輪カプラも中国メーカー製だった。
残る1台はディーゼル車の「漢風P9トラクタ」で、欧州ハイエンド車を意識したGVW25トン(連結総重量は不詳)6×4セミトラクタとしている。
漢風P9も中国市場で販売中だが、展示車は中国のトラックでは珍しい後輪エアサスペンションを装着したもので、Euro-6排ガス規制適合のウェイチャイ製550ps・12.5リッター直6エンジン、油圧リターダ付の法士特製16速AMTを搭載、第5輪カプラもヨースト製を架装するなど、確かに欧州志向の仕立てとなっていた。
現地メーカーが強い欧州市場に、中国製トラックが食いこんでいくのはやはり難しいと考えられるが、一部では価格競争力のあるトルコ製トラックが見られるようになってきたのも確かで、今後の推移が気になるところである。
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