2022年10月27日、トヨタ自動車は「一部車種での納車時スマートキー(電子キー)付属個数の変更について」という異例の公式リリースを発表。世界的な半導体不足と流通不安による超長納期化が続くなか、その対応策の一環として、一部車種で「従来は納車時にスマートキー2個渡していたが、1個は後日送付」とする施策を発表した。
文/ベストカーWeb、画像/TOYOTA
■「なんとかしのぐ」という強烈なメッセージ
新型車の納期が長期化しており、一部車種は注文から2~4年かかるようになった。新型コロナ感染症によるロックダウンや、ロシアによるウクライナ侵攻を原因としたレアメタルの流通不安などさまざまな要因が重なるなかで、近年需要が激増する「半導体不足」が加速したことが重大なポイントとなっている。
従来、自動車に使用される半導体は一台あたり50個程度であったが、運転支援装置やハイブリッド化を含む電子部品の需要増加にともない、80~100個程度まで増えている。自動車と同じく半導体を多く使用するノートPCやスマートフォンの世界的需要増加も、この状況悪化を後押しして(需要増加と供給不足が重なって)、世界的な半導体不足が続いている。
一時期「世界的な半導体不足はピークアウトした」との報道もあったが、いっぽうで「(半導体の供給遅れは)2024後半まで続く」という予測もある。
こうした状況を受けて、トヨタ自動車は「納車時に渡す電子キーを2個から1個へ(もう1個は後日)」という施策を発表した。
【トヨタブランドで納車時に電子キーが1個になる車種】
クラウン、カムリ、プリウス、bZ4X、RAV4、ハリアー、C-HR、アルファード、ヴェルファイア、ノア、ヴォクシー、ランドクルーザー、ランドクルーザー プラド、グランエース
【レクサスブランドで納車時に電子キーが1個になる車種】
LS、ES、IS、LC(含むConvertible)、RC F、LX、NX、UX、UX300e
トヨタは先日(2022年10月21日)、年間生産台数の下方修正を発表。これまで堅持していた年間約970万台から減産する見込みとなった。「クルマを作れさえすれば売れる」という状況であるにも関わらず、部品が数点届かないことにより、工場ラインが止まり、納車が滞る事態が続いている。
トヨタの月間グローバル生産台数は75万~90万台に及ぶため、チリも積もれば山となる。とはいえ不足する半導体は使い回しが効かないものも多く、(電子キーの納付を一個ずつ減らしたとしても)この施策で劇的に納期が改善するわけではないだろう。それでも、今回の施策により状況が逼迫していることが全業界に強烈に伝わるし、多少の工期短縮効果も見込める。
そもそもの話として、納車時に電子キーを2つ渡されたとしても、納車されるのは1台なのだから「当面使うのはひとつで足りる」というユーザーは多いだろう(「なんだかさみしい」という気持ちはよくわかる)。
「いまは大変な状況であり、これが落ち着くまで業界一丸となってなんとかしのぎましょう」という、トヨタからの強烈なメッセージと捉えるニュースといえる。
コメント
コメントの使い方