高性能を追求するほど、センサーの数と性能が高くなる
ハンズオフ(渋滞時のみを含む)走行を可能とするには、周囲の障害物との距離を測るミリ波レーダーや音波ソナー、信号や標識、障害物が何かをとらえるカメラ、また、ドライバーの顔を監視するカメラ、3D高精度地図データ、前後/左右方向の実車位置を高精度で把握する強固な通信システムなど、多くのセンサーやデバイスが必要。
たとえば、渋滞時ハンズオフが可能なレヴォーグのアイサイトXでは、ステレオカメラの視野角、視認距離を、ともに約40%拡大したオン・セミコンダクターの2.3Mイメージセンサーを採用、車体四隅にレーダーを4個、リアソナー、GPS測位システムを追加した構成。センサーの数はかなりシンプルであり、コストも低く抑えられている。
ただ、全車速ハンズオフが可能なスカイラインのプロパイロット2.0となると、レーダーが5個、カメラが7個、音波ソナーが12個、高精度地図、高精度GPSが搭載される(後述のLiDARは使用していない)。「1.0」では単眼のカメラも、「2.0」では「トライカム」と呼ぶ画角と焦点距離が異なる3つのカメラを装備し、左右に広く遠くまで補足できるようにしている。
レクサス「LS」やトヨタ「MIRAI」のアドバンスト ドライブや、ホンダ「レジェンド」のホンダセンシングeliteではさらに、ミリ波レーダーとカメラの構成ではセンシングが不可能な、先行車や歩行者、建物などの形状や距離を三次元で把握できる「LiDAR(ライダー、Light Detection and Rangingの略称。レーザー光線を対象物へ照射し、その反射光を光センサーで補足し、形状や距離を3次元で読み取る)」という超高性能なレーザーセンサーを搭載。LSのアドバンスト ドライブは、レーダーが5個/カメラが4個/ LiDARが4個の構成(※2021年10月に、LiDARを前方1基から左/右/後方の3基を追加)であり、レジェンドのホンダセンシングeliteは、レーダーセンサーが5個、フロントセンサーカメラ2個、ソナーセンサーが12個、LiDARが5個の構成という武装ぶりだ。
ここまでやるのは、各メーカーが安全性能にこだわっている証拠。ハンズオフ走行で一度でも事故がおきると、そのシステム自体はもちろんのこと、会社の信頼性まで揺らいでしまう。メーカーとしてあってはならない事態を引き起こさないよう、念には念を入れたシステムとしているため、高額となってしまうのだ。
いかに性能を落とさずに価格を下げるか、目下研究中
ただもちろん、これらはコストとのトレードオフ。そのため、これまでは比較的コスト高のインパクトを吸収しやすい高額車を中心に搭載されてきたが、台数が売れない高額車に使うよりも、廉価なクルマに広く搭載し、多くのお客様に使ってもらったほうが、事故も減るし、量販効果も得られる。各メーカーとも、いかに性能を落とさずに価格を下げるか、目下研究中のようだ。
例えばホンダでは、ハンズオフ走行ができる次世代ホンダセンシング360を、2024年以降に投入予定だという。つい先日、ホンダテストコースにてその体験会に参加させてもらったが、LiDARを使わずに既存のセンサーを駆使したハンズオフ走行とハンズオフでの自動レーンチェンジは、すぐにでも商品化できそうなレベルの完成度と感じた。
スバルも、アイサイトXの取材の際、エンジニアが、新型レヴォーグのアイサイトXでも、高速道路上でのハンズオフ走行は可能だが、予測がつかない不測の事態にどこまで備えるのか、他メーカーがどういったタイミングでハンズオフ商品を投入してくるのか、世の流れを見計らっている状況だ、と語っていた。
たとえば、かつてのカーナビゲーションと同価格程度である、車両価格プラス30万円程度のメーカーオプションであれば、ハンズオフ走行の装着が視野に浮かぶ方も増えてくるのではないだろうか。「ハンズオフ」ときくと、「手を離すなんて怖すぎる」とか、「別に現状のアダプティブクルーズコントロール(ACC)で十分」と考えるだろうが、かつてACCのときだって「ペダルから足を離すなんて」とか、「別にペダル踏むくらい自分でやる」と考えたはず。いまはまだ、アイズオフまでは(レジェンドを除いては)できないが、ハンズオフができるだけでも、長距離走行時の運転負担はかなり軽減されるし、それだけの価格を投じる価値は十分にあると思う。
はたして、ハンズオフ走行が標準搭載となる日は来るのか!? そしてそれはいつになるのか!?? 今後が非常に楽しみだ。
【画像ギャラリー】た、高い… でも憧れる!! 高速道路上でハンズオフ走行ができる国産車たち(33枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方