3気筒エンジンのメリットは?
このように増えてきた3気筒エンジンだが、メリットというと、燃費を含む性能面や、設計や生産の面において、いろいろ合理的であることが大きい。燃費面では、エンジン本体のフリクションを低減する上では気筒数が少ないほうが有利で、さらにはパーツ点数も少なくてすめばエンジンの重量も軽くなる。
また、エンジンの燃焼効率としては、1気筒あたりの400~600cc程度が理想的といわれており、これよりも大きいとフリクションロスが増え、小さいと冷却損失が増える傾向にある。
軽自動車で4気筒というのは、これから外れてしまい、あまり効率のよいエンジンではなくなり、コンパクトクラスでよく用われる1.0~1.5Lでは、4気筒よりも3気筒のほうが1気筒あたりの排気量がより適性値に近づくことになる。
また、気筒数が少なく1気筒あたりの排気量が大きいと、一般的にトルクバンドは狭いが瞬発力のあるエンジン特性となる。これは軽自動車やコンパクトカーにとっては好都合だ。
さらには、4気筒エンジンと基本設計を共有しながら、1気筒減らすことで3気筒化が可能であり、比較的簡単にダウンサイジングエンジンをつくれることも挙げられる。いまや排気量が2Lの4気筒エンジンというのは、世界中の大半の乗用車メーカーがほぼ例外なくラインアップしているが、それをベースに1.5Lの3気筒エンジンにするのはあまり難しいことではない。
音や振動…3気筒特有のデメリットは克服できる?
このようにいくつものメリットが挙げられる。一方で、それほどよいものでありながら、普及までに時間がかかった要因として挙げられる大きなデメリットが、お察しのとおり「振動」と「音」だ。
一般的に奇数の気筒数のエンジンやV型エンジンは、“偶力”と呼ばれる物体を回転させようとする力による振動が発生しやすいのだが、それが3気筒の場合はけっこう大きい。
これに対してはバランサーシャフトが有効なのだが、コストや燃費を優先しなければならない今どきの3気筒エンジンではなかなか採用が難しい。そのためフライホイールやクランクシャフトをアンバランスにして振動を打ち消す手法もみられる。
あるいは、燃焼やエンジンマウントの改善も大きい。直噴化と燃焼の解析の進化などにより、3気筒特有の振動と、それによる音をかなり抑えるられるようになった。加えて、ディーゼルにもよく用いられるペンデュラム(振り子)型エンジンマウントが用いられるようになったことも非常に効いている。
さらには、アイドリングストップ機構の普及も、3気筒エンジンの弱点をユーザーに感じさせない上では一役買っていることに違いない。
出力特性についても、3気筒エンジンは低速トルクには優れるが、頭打ちになりやすいのに対し、過給機を付けると、その問題は一気に解消する。
その他、3気筒エンジンは4気筒エンジンに比べて全長が短いぶん、レイアウトの自由度が高まり、ひいては今後ますます増えていくであろう電動化にまつわる各種コンポーネンツとの搭載の兼ね合いにおいても、なにかと好都合といえる。
あるいは、エンジンを縦置きする車種の場合、もともと軽量なエンジンをエンジンベイの後方すなわちフロントミッドシップレイアウトすることが可能となるため、ハンドリングが劇的によくなることも副産物的なメリットといえる。たとえばBMWの3シリーズや1シリーズの3気筒モデルは、もともと4気筒モデルも優れているところ、さらに輪をかけて気持ちのよいハンドリングを実現している。
特有のデメリットを克服し、いくら振動や音が低減されたといっても、フィーリングの質においては4気筒にかなうわけではないが、メリットがますますフィーチャリングされるようになった3気筒エンジンは、今後ますます増えていくことに違いない。
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