■常に利用者に向いた導入を
こうした進歩がバスの新たな時代を育てていくであろうことは歓迎すべきことだが、常に視野に入れておきたい課題がある。それはさまざまな方式が混在し続けることや、反面移行期間を置かずに別システムに一斉転換してしまうと、利用者や現場にとっては混乱やストレスにつながるということである。
例えば現在水戸、金沢などでハウスカードのICカード事業者と10カードの事業者が混在して互換性のないケースがあり、利用者に不便を感じさせるだけではなく、「使える使えない」のトラブルが発生しやすいため、現場の乗務員に負荷がかかっている状況がある。
またある事業者ではICカードを導入したとたんに磁気カードの使用を中止したが、全車ICカード導入までにタイムラグがあった。
そのため、同じ区間なのにあるバスはICカードのみで既存の磁気カードがNGになり、別のバスは磁気カードのみでせっかく新たに購入したICカードが使えないという、利用者にとっては非常に不親切な状態が続いた。せめて1年程度の移行期間は必要だった。
むろん、比較的小銭レベルの低額で鉄道とバスの接続利用などが多い一般路線は交通系ICカード、高額な運賃や外国人利用が多い高速バスなどはVisaタッチといった、上手な使い分けによる併存はありうるだろう。
より合理的かつ良いシステムに転換することは社会と時代の要請ではあるが、単純に効率性(二重投資回避など)といった視点だけでなく、利用者目線、現場目線に立った導入、転換が必要と考えられる。