陸運業における令和4年の労働災害発生状況(速報値)が公表された。死亡災害は減少し過去最少を更新する見込みだが(確定値で変更される可能性がある)、逆に死傷災害は増加し、基準年である平成29年比で16%増と厳しい状況となった。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
図表/陸上貨物運送事業労働災害防止協会
速報値で過去最少となった死亡災害
トラック運送における労働災害防止団体(労働災害防止団体法に基づき設置された特別民間法人)である陸上貨物運送事業労働災害防止協会(略称:陸災防)は、陸運業における令和4年(2022年)の労働災害発生状況を公表した。
発表されたのは1~12月期の速報値で、各年の確定値は変わる(通常は増える)可能性があるが、速報値同士で比較すると、死亡者数は過去最少であった令和2年(2020年)を下回っており、記録更新が想定される。いっぽう全体の労災発生件数を表す死傷災害は、前年比・基準年比ともに増加している。
死亡災害の速報値は78人で、前年と比べて6人の減少となった。第13次労働災害防止計画の基準年である平成29年の死亡者数は113人だったので、基準年と比較すると約31%の減少だ。
事故の型別でみると、依然として「交通事故(道路)」が最も多く31人だった。ただし、前年比では7人、基準年比では21人減っており、減少傾向が続いている。
交通事故に次いで多いのが「墜落・転落」で、死亡者数は20人だった。これは前年の12人を大きく上回り、基準年を上回るなど、大幅な増加傾向にある。
そのほか、「はさまれ・巻き込まれ」が9人(前年比で2名の減少)、「飛来・落下」が7人(同2名の増加)などとなっている。
死亡災害で多いのは……
ドライバーの努力と安全装備の普及で減少傾向にある交通事故だが、未だに死亡災害全体の4割を占めている。令和4年の当該事故としては次のようなものがあった。
・路肩に停車中のトラックに追突した
・渋滞最後尾のトラックに追突した
・前方を走行するトラックが減速したところ追突した
・スリップしてガードレールに衝突し横転した
・中央線をはみ出して走行し、対向車と衝突した
いっぽう、大幅に増えている「墜落・転落」は次のようなもので、特にトラックの荷台上での荷役作業中の災害が多くなっている。
・ウイング車の荷台上で合板をラッシングベルトで固定中に墜落した
・トラックの荷台上で積荷の固縛を行なっていたところ墜落した
・キャビンの屋根を補修しようとしたところ墜落した
・トラックに積まれた木材のベルト掛け作業をしていたところ墜落した
・脚立上でトラックの前方を洗車していた際に墜落した
・フォークリフトを運転中、プラットホームから転落した