■アイオニック 5の出火事故に対するヒョンデの見解
昨年6月に、ヒョンデ アイオニック5が韓国・釜山市の高速道路の料金所付近で衝突を起こし、出火したという事故が日本でも話題になった。衝突直後に炎上して乗員が亡くなった、などの憶測がなされたが、事実はどうだったのか。
ヒョンデモビリティジャパンに確認したところ、この事故の分析を警察関連組織の科学捜査院が実施しており、秋にプレスリリースが出ているとのこと。内容は以下の通りだ。
・車両は時速96キロで衝突しており、その直前5秒以内にはアクセル・ブレーキ・ハンドルはまったく操作されていなかった
・衝突した(料金所の)衝撃吸収体の構造部分がバッテリーに刺さるような形となり、バッテリーが破損し発火に至った
・遺体の解剖結果、肺や気道に煤は検出されなかった。死因は焼死ではなく、衝突の際の衝撃によって即死状態であった。
・乗員は、いわゆるシートベルトクリップのようなものでシートベルトを緩めた状態で乗車していた。
ヒョンデモビリティジャパンの佐藤健氏は、「乗員は、衝突直前に何の操作もしていないことから、おそらく居眠りなど意識のない状態でそのまま衝突したのではないでしょうか」とコメントする。
またIONIQ5の衝突安全性能については、「ユーロNCAPやIIHSの安全評価で、フルラップ・オフセット・側面衝突などの衝突試験もしていますが、ユーロNCAPでは★5(最高評価)、IIHSではトップセーフティピックプラス(最高評価)を得ています」(佐藤氏)とのことだ。
バッテリーを保護するための技術も進化しており、佐藤氏は「IONIQ5はEV専用プラットフォームE-GMPを採用しており、ゼロからバッテリーの安全に配慮した設計がなされています。」と説明する。
■EVで事故を起こしてしまったらどうする?
いっぽう、もしEVを運転する立場になった場合には、何に注意すればいいのだろうか。事故対応の多様な経験値を持つJAFに聞いたところ、以下のような回答が得られた。
・走行中に少しでも異常を感じた場合、まずは続発事故防止のため安全な場所に停車させ、セレクトレバーをパーキング位置にし、パーキングブレーキをかけ、パワースイッチをOFFにします。そして、JAFなどのロードサービスに救援要請をします。
・感電の恐れがあるため、高電圧部位・高電圧配線などには、絶対にさわらないでください。
・バッテリーなどから液体が漏れていたとしても絶対にさわらないでください。
・電解液(無色透明で芳香臭あり)が漏れているのを発見した場合は、引火性があるため火気を遠ざけ、十分に換気を行います。
・万が一、車両火災が発生した場合は、初期消火活動が可能な状況であれば、消火器はABC消火器を使用してください。少量の水での消火作業は、危険であるため絶対に行わないようにしましょう。
・消火活動をできない場合は、安全な場所に避難し、119番に通報して消防隊の到着を待ちます。爆発の恐れもあるため、車両からは距離をとって避難しましょう。
■知識や情報を身に着けて「正しく」怖がろう
EVやハイブリッド車には、日常では接することのないほどの高電圧が流れており、万が一感電すると非常にリスクが高いのだが、感電対策に関しては法律で保安基準が定められている。
その内容は、衝突時にエアバッグが展開した際、それと同時に高電圧回路が完全に遮断され、乗員や救護要員の感電を防ぐことを義務付けるものだ。この機能についても、JNCAPを始め各国の衝突安全評価で検証も行われている。
いかがだったろうか。ここまで紹介したように、EVの出火事故のリスクはゼロではない。ただそうした事態の重大さについてはEVメーカーもバッテリーサプライヤーも認識しており、設計、製造、運用といったあらゆるレベルで、リスクをなくす研究が進んでいる。
衝突安全については各国の安全評価も出ており、最高評価を得ているEVもあるのでそれを参考にするといい。自然発火についてだが、これは車両ごとにリスクが違うので、興味のあるEVがあれば、自然発火の事例がないかどうか調べてみるべきだろう。
いずれにしろ、やみくもにEVを危険視する必要はない。知識や情報を身に着けて「正しく」怖がることが必要だ。
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