「今の時代、おっさんはどんなクルマに乗るべきか?」
いやもちろん、どんなクルマに乗ったっていいのだが、アナタ(おっさん)が仮にクルマ好きなら、周囲のクルマ好きからどう見られるかを意識するはずだ。そして少なくとも、「シブイなぁ!」とか、「わかってるね~」と思われたい、と願うのではないだろうか? そういう選択を、ワタクシ清水草一が独断で展開いたします!
文/清水草一
写真/トヨタ、フォッケウルフ
■日本が生み出した大傑作はどのモデルを選ぶべき?
新型プリウスが話題になっている。そのフォルムは実に鮮烈。私はこれまでフェラーリ13台、カウンタックを2台乗り継いでいるが、その私をして「まるでスーパーカーだ!」と言わしめた。かつてスーパーカーにあこがれたおっさんなら、気にならないはずはない。
がしかし、人気爆発+半導体不足により、新型プリウスの納期は恐ろしく長くなっている。
2.0Lハイブリッドモデルに関しては、納車は2024年の5月以降とアナウンスされた。1.8Lハイブリッドなら今年8月以降と比較的短いが、おっさんとしては、いまさら1.8Lハイブリッドを買う気にはなれない。どうせならソーラーパネル付きのPHEVを! と考えているご同輩も多いはずだが、そっちは「納期2年」という噂もある。そんなに待っていたら死んじゃうかもしれない。これは由々しき問題だ。
思えばプリウスは、世界初の量産ハイブリッドカー。日本の自動車産業が生み出した大傑作である。そういう視点に立てば、あえて新型でなくてもいいのかもしれない。むしろ古いプリウスのほうが歴史的な意義は深い。とにもかくにも、日本のカーマニアとして、死ぬまでに一度はプリウスを手に入れるべきだ!
ではおっさんは、どの代のプリウスを選ぶべきか。今回はそれを考察してみたい。
■初代プリウス(1997年~2003年)
言わずと知れた元祖プリウス。自動車史に輝く金字塔である。初代は大きくわけて前期型と後期型(2000年5月のマイチェン以降)がある。世界初の挑戦ゆえに、前期型はハイブリッドバッテリー(ニッケル水素電池)系のトラブルが多発し、ベストカー編集部の社用車など、2回も無償交換を受けたほどだ。
また、フットブレーキと回生ブレーキの協調制御が未熟だったため、初代前期特有の「カックンブレーキ」も目立ったが、なかには「そこが初代前期ならではの味わいサ!」とのたまうカーマニアもいる。私もそのひとりである。
後期型は、ハイブリッドバッテリーの耐久性やカックンブレーキが改善されたが、相変わらずアクセル全開時の遅さはかなりのもので、「あんなクルマに乗れるか!」と馬鹿にされたりもした。真剣な話、当時の一部カーマニアたちは、「燃費がよくて何が面白い!」「のろのろ発進しやがって、イライラするぜ!」など、初代プリウスを毛嫌いしていた。
が、実はディープなカーマニアほど、初代プリウスの凄さや、独特のドライビングプレジャーに感銘を受けていた。個人的には、初代後期を中古で購入し、エンジンとモーターが織り成す男女関係のような奥深さに大いにハマッたものである。
初代プリウスによる燃費アタックのヨロコビに一度目覚めたら、普通のガソリン車など単純すぎて面白味を感じなくなる。初代はエンジンとモーターの制御がまだ粗く、いま何をやっているのか体感しやすかったこともあり、アクセル操作でその関係性を微妙にコントロールすることが、マニアにはたまらないヨロコビになった。
デザインは、スーパーカールックの新型とは似ても似つかない「カメ」。究極の草食系だったが、その大人しすぎるデザインがまた、年を経るごとに味わい深くなっていった。
今や初代プリウスはネオクラシックカーの範疇であり、カーマニア的な価値は非常に高い。いまあえて初代プリウスに乗るおっさんは、カーマニアの超エリートである。新型プリウスなんかよりも、おっさんは初代プリウスに乗れ!
とは言うものの、初代プリウスの中古車は、ほぼ絶滅寸前だ。執筆時点の流通台数は、全国でたったの2台。相場は約100万円と手頃だが、年式を考えるとかなり割高だ。
なにしろ初代は、バッテリーの耐久性が足りなかった。前期型はもちろんのこと、後期型でも10万km前後が限界。私の初代プリウスも、ちょうど10万kmでバッテリーが超怪しくなり、ギリギリ動く状態で、なんとか業者さんに引き取ってもらいました。
というわけで、いま初代を購入するのは結構ハードルが高いが、ごくたまにお宝が流通している。執筆時点では、2001年式(後期型)走行1.8万kmという珠玉の個体が、車両本体110万円で売られていた。うおおおお~! たとえ走行距離が少なくても、22年落ちだけにリスクはある。しかし勇気あるおっさんは、掘り出し物の初代プリウスに突撃すべきである!
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