コロナ禍前まで長年にわたって賃金デフレが続いてきた日本。サラリーマンにとってはまさに“失われた30年”だったが、ここにきて空前の賃上げラッシュが巻き起こっている。クルマ界の賃上げについてレポートしよう。
文/福田俊之、写真/トヨタ、日本自動車工業会、AdobeStock(タイトル写真:takasu@AdobeStock)
■空前の賃上げラッシュに沸く自動車メーカー
自動車業界も賃上げラッシュの波に乗っており、その例にもれない。トヨタ、ホンダが労働組合の要求に対して一発で満額回答を出したのに端を発し、完成車メーカー全社が集中回答日である2023年3月15日までに満額回答している。
その上げ幅も大きく、定期昇給とベースアップ(ベア)を含め月1万円以上の引き上げが続出したほか、年間一時金(ボーナス)もトヨタの6.7カ月を最高に、他社も5.3カ月~6.6カ月の水準で妥結した。
排出ガス不正で業績が悪化している日野自動車でさえ賃上げ分は総額7500円/月、一時金も組合要求を上回る5.0カ月に引き上げた。
もともと自動車メーカーのなかでは賃金が最も高いトヨタは間接部門に相当する事技職で9370円/月と1万円に達しなかったが、それでもトヨタ労組は「ここ20年で最高の要求額」としており、経営陣がそれを呑んだのはモチベーション向上に少なからず寄与するものと考えられる。
■ウクライナ紛争などの余波による物価高騰にも万全?
すでに働いている従業員だけでなく、新卒採用の初任給引き上げも目立った。金額や引き上げ率を明言しているケースとしてはホンダ(大卒22万8000円→25万1000円、大学院卒25万4900円→27万5900円)、三菱自動車(基本給10%引き上げ)などがあるが、明言していない企業も軒並み大幅上昇する見通しだ。
コロナ禍やウクライナ紛争の余波で生活費が急騰しているが、賃金の手取り額が増えさえすれば、恐るるに足らず。働く側としては生活不安が後退するだけでも喜ばしいだろう。
かつては就職人気ランキングで常に上位に位置していた自動車産業だが、近年は順位を大きく落とし続けていた。若者のクルマ離れが進んで自動車ビジネスへの関心が薄れているという見方はある。
だが、報酬が高いとなれば話は変わってくる。果たして今回の大幅賃上げで自動車産業は若者の憧れの対象に返り咲けるのだろうか。
コメント
コメントの使い方日産自動車のヤバさだけが際立ってしまったな。
役員の報酬だけは他社に負けてないんだが…