車の持つパワーを表わす最高出力は、どんな新車のカタログにも必ず記載されている数値のひとつ。自動車ファンの間では「馬力」として親しまれ、その車がどれくらいの力を秘めているのかをわかりやすく掴む指標として、いつも話題の中心にのぼってきた。
国産車においては“自主規制”の名のもと、長らく新車の最高出力が280馬力に抑えられる時代が続いてきた。その歴史が変わったのは2000年代に入ってからと比較的最近のこと。そして、国産車として初めて300馬力を突破した車は、意外にもスポーツカーではなかった。
公道で使いきれるパワーには限りがある。必要以上の馬力に意味はない。一方で馬力の向上は、自動車の性能向上の歴史という側面も持っている。300馬力を突破した車たちは、その意味で日本車の歴史に新たな1ページを刻んだモデルでもあった。
文:ベストカー編集部
写真:編集部
ベストカー 2019年3月26日号
史上初の300馬力突破車はホンダのレジェンド
1989年登場の日産 フェアレディZ(Z32型)から始まった280psの自主規制が廃止されたのは2004年7月。その後、初の300ps突破車として登場したのが、同年10月デビューの、ホンダ4代目レジェンドだ。
搭載する3.5LのV6、SOHCエンジンは、最高出力300ps/最大トルク36.0kgmの出力を発生。4輪に駆動力を自在に配分するSH-AWDの優秀さもあり、この年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得している。
その後、2005年に日産から初代フーガ 450GTが登場(最高出力:333ps)、同年10月には12代目クラウン(通称ゼロクラウン)が、マイナーチェンジで3.5Lモデルの最高出力が315psになるなど、300psオーバー車界隈は活況を呈していく。
ミニバンにも300馬力突破車が登場
そんななかでの白眉は2006年登場のエリシオン プレステージとレクサス LS。エリシオン プレステージは、レジェンドと同エンジンを搭載し、国産ミニバン初となる300㎰を発生した。
そして、レクサスLS460。4.6L・V8エンジンの最高出力は385psに達し、280ps規制撤廃後もなんとなく300ps台前半をウロチョロしていた国産勢に、「もっとパワー出してもいいんだよ」と教えてくれた。
スポーツモデルの高出力化も当然行われたが、面白かったのは480psを発揮したGT-R(R35型)と、423psのレクサスIS Fがデビューした2007年12月だ。
特にIS Fが搭載した5LのV8、大排気量NAエンジンは、将来的に存続が難しい類のエンジン。レクサスにはありがとうといいたい。今もあるけれど。
インプレッサとランサーエボリューションといえば、生まれた時から戦うことを宿命づけられた永遠のライバル同士。ランエボのほうがパワー志向のイメージがあるが、限定車ではない市販モデルで300psを突破したのはインプレッサWRX STIのほうが先。
308psの最高出力で3代目インプレッサWRX STIが登場したのが2007年10月。一方のランエボXは「無駄な出力競争は避ける」として、2008年10月まで300ps化はしなかったのは意外でもある。
その後、現在まで300psオーバー車が続々と登場しているのはご存知のとおり。それでも現行アルファードの最高出力が301psで、エリシオンプレステージから1馬力しか向上していないのを見ると、ミニバンにはあまり300㎰は意味がないのかもしれない。
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