日本の路線バスのシートには、モケットと呼ばれる織物が張られている。最近は青いモケットが幅を利かせて、どこもみんな同じようになってしまった気がするが、よくよく見ていくと、実はそうでもなさそうだ。
文・写真:中山修一
■青系になったワケは例の決まりから
青いシートが大増殖したとはいえ、青いモケット自体は昔からある。鉄道の座席のモケットが紺色に近い青が主流だったせいか、バス事業者によっては、鉄道とよく似た色のシートを採用していた。
どの事業者でも基本が青系になったキッカケといえば、2000年代初め頃から注目されはじめたバリアフリーの観点だ。バリアフリー法が始まった後に作られた路線車の車内には、オレンジ色のつかみ棒がほぼ必ず設置されている。
つかみ棒のオレンジ色には視認性を高める目的があり、他の車内設備に色が溶け込んで、つかみ棒が目立たなくなってしまわないよう配色に工夫が必要となる。
その際、シートに張るモケットを青にすれば、全体にほどよいコントラストが生まれ、どれがどの設備か簡単に見分けることができる、というカラクリだ。
■青にも微妙なニュアンスが!!
上記のようにバリアフリーの観点から、路線バスのシートの青色化が一気に進んだと言えるが、日本全国すべての路線車のシートには、まったく同じ青色が使われているのだろうか。
全国各地の路線バスを見ていくと、紺色に近い青系、ほぼ青系、青緑系、青紫系と、一口に青と言っても地色に微妙なニュアンスの差があり、けっこう興味深い。
前述のオレンジ色のつかみ棒が目立ってさえいればOKなので、シートモケットの地色に特定の青を指定する決まりはないようだ。
■「柄物」が最高のトレンド
最近の青系シートではもっぱら「柄物」がトレンドだ。青を主体に、赤、黄色などをほどよく配した、「刷毛目」とも呼ばれる幾何学模様のモケットが全国的に広く使われている。
この幾何学模様も、名称の通りハケで塗ったような柄をはじめ、ブロックパターン、四角形のランダム配置、水玉風など、何気にバリエーションが豊富だ。
メーカー標準(デフォルト設定)と言えそうな模様もあるが、発注者の好みに応じて柄が選べるようで、それこそ事業者ごとにバラバラだと考えて良いほどだ。
無地の青色モケットを張っている路線バスもなくはない。それでも柄物が一般的であるのは、模様を入れることで汚れを目立たなくする効果が期待でき、結果コスト削減に繋がるためだ。