ハイテク化の暴走状態!?  バスの「行先表示手段」の進化が止まらない!!

ハイテク化の暴走状態!?  バスの「行先表示手段」の進化が止まらない!!

 バスは外から見て行先が分からないと使いたくても使えない。そのため車体の前や横・後ろに行先を掲げる表示器が付いている。バスの歴史を覗いてみると、時代によって変化を続けている行先表示器の姿が見えてくる!?

文・写真(特記以外):中山修一

■シンプル・イズ・ザ・ベスト? なバスの黎明期

1900年代初頭のイギリスの路線バス。2階席の前と横に行先を記した板が取り付けてある(写真:パブリックドメイン)
1900年代初頭のイギリスの路線バス。2階席の前と横に行先を記した板が取り付けてある(写真:パブリックドメイン)

 走るバスの系統が1つしかなければ、車両には何も手を加えず、停留所に経路を書いておくだけで事足りるかもしれない。しかし各方面に向けて複数のバス系統が設定されているとなれば、最低限の案内が不可欠となる。

 路線バスが誕生したのは19世紀の終わり〜20世紀の初め頃だ。この時代のバスに、利用者に行先を目で知らせるサービスが行われていたかと言えば、ちゃんとあったらしい。

 当時行われていたのは、大きな板に文字を書いて、車両の高い位置に掲げるという至極アナログな方法だ。最も原始的だが一番シンプルで確実とも言える。

 木、鉄板、ホーロー、プラスチック等々、様々な材質の行先掲示板が作られている。そのようなアナログ行先板のことを日本では「サボ」と呼び親しんでいる。元々鉄道用語であるが、バスの行先版をサボと呼んでも差し支えない。

■クルクル回して行先を変える方向幕

 バスという乗り物が誕生して長い間、板のアナログ行先表示で落ち着いていたが、1920年代になるとまた新しい技術が注目されるようになった。

 行先表示がタダの板の場合、系統が多い地域では、その数だけ内容が違う板を何十枚・何百枚も常備しておく必要が生じて管理に苦労する。

 さらに、バスが走り終える度に板を交換する手間も加わる。そこで、板よりも管理がラクで、バスを走らせる担当者が一人で行先表示の変更ができるように工夫した装置が、巻き上げ式方向幕だ。

前面おでこの部分に方向幕が付いた、1930年代の国鉄バス1号車
前面おでこの部分に方向幕が付いた、1930年代の国鉄バス1号車

 巻き上げ式方向幕は、装置のフレームの上下に2本の軸をそれぞれ少し離して横向きに通し、歯車でつなげて回転できるようにしてある。

 次に、いろいろな行先をコマ分けして記した長い「幕」が巻物状になったものを用意して、それを軸の片側にセットする。

 幕の端っこを引き出して、一方の軸に噛ませてハンドルを回すと幕が巻き取られていき、希望する位置で止めると、軸と軸の間のスペースに表示させたい行先が出てくる仕組みだ。

 ここでは便宜的に巻き上げ式と呼んでいるが、逆向きに回して巻き戻しもできる。方向幕の装置本体のよりフォーマルな名称は「巻取機」と言う。

 はじめのうちは装置にクランクとハンドルが付いていて、手で回して表示させる行先を変えていた。後に電動モーターの力を利用する巻取機が発明されたが、実用化したのは1960年代になってからだ。

巻き上げ式方向幕の付いた大型路線車いすゞキュービック
巻き上げ式方向幕の付いた大型路線車いすゞキュービック

 また、夜間や暗いところでは表示が見えなくなってしまうため、幕の後ろに電球や蛍光灯などの光源を置いて、必要の際に照らす対策が取られている。

 方向幕には初期のものでは布が使われ、のちにポリエチレンやポリプロピレン等の、石油系原料から作られたフィルムに材質が取って代わった。

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