ホントに建機のキャブだった
さて、建機のようなキャブは、実際にも建機で使われているキャブでした。これはイタリアのロックマン・キャビーネ社というキャブ専門サプライヤの製品で、建設機械をはじめ農業機械、林業機械、鉄道保線車両などで幅広く採用されているものです。もっとも運転操作系は、DAF・CFのメーターパネルやハンドルが組み付けられています。
架装している草刈り装置は、オランダのハーダー社製で、4段屈折式ブームに草刈りヘッドを取り付け、左側は5.4m先まで、右側は7.8m先まで延ばすことができ、刈った草はバキューム装置で吸い込みます。装置は油圧作動ですが、その油圧を発生させるために、専用の224馬力・5.7リッターディーゼルエンジンも搭載しています。
吸引した草を収容するのが、同じくオランダのヤン・フィーンハウス社製の密閉式ダンプ荷台で、容積は18立方メートルもあります。草刈り装置による作業操作や荷台のダンプ操作は、ドライバー1人ですべてキャブ内から行なうことができます。
シャシーもすごかった
いっぽう、これらの装置を搭載する「ブレトラック2」は、全長10mと日本でよくみる大型ウイング車よりも短いほどですが、空荷の車両重量だけで24トンもあり、燃料満タン・フル積載状態の車両総重量(GVW)に至っては、トラック単車でありながらGVW41トンが認められています。もっとも実際の運用では、そこまでの重さになることはないそうです。
これだけのクルマを走らせるだけに、DAF・CFシリーズの中でも、440馬力・10.8リッターディーゼルエンジンを搭載する、前1軸×後2軸駆動(6×4)シャシーをベースにしていますが、さらに油圧式ドライブアクスルを前に1軸追加しています。
油圧式ドライブアクスルは、草刈り作業中の微低速走行でのみ使われるための装備です。「油圧走行モード」では、変速機(アリソン製12速トランスミッション)が2速固定となり、またエンジンの力を油圧に変換した上で、その油圧によって車輪を回すしくみになっています。
クルマとしては、前2軸・後2軸の8×6駆動といえそうではあるものの、通常の走行時は8×4(後2軸駆動に限る)、草刈り時は8×2(油圧前1軸駆動に限る)という変則的な駆動形態なので、文字での表現も少しややこしくなってしまいます。
見た目で度肝を抜かれた「ブレトラック2」ですが、微低速走行から時速80km高速走行までという両極端な速度性能を、2種類のドライブトレインによって両立させていたとは、中身にもびっくりです。さすが欧州各国から多数の専門職が訪れるIAAの出品車でありました。
【画像ギャラリー】上が建機・下がトラックの顔をもつ高速草刈り車・ブレトラック2の姿!(7枚)画像ギャラリー