■日本と欧州で売れゆきを伸ばしたヤリスクロス
この違いは屋内の椅子を見てもわかるだろう。低い位置に座るソファを置くには足元に広い空間が必要だが、高い位置に座るテーブルのチェアなら狭い場所でも窮屈に感じない。ヤリスはソファ、ヤリスクロスはテーブルのチェアに相当するから、後者の車内は広く感じられて居住性も優れている。
荷室も天井の高いヤリスクロスに余裕がある。ヤリスクロスの荷室容量は390Lだから、ヤリスの270Lを大幅に上回る。比率に置き換えると1.4倍だ。欧州では、コンパクトな車種でも荷室の広さが重視されるから、ヤリスクロスが好まれる。SUVというより、実用性の高い5ドアハッチバックとして選択されている面もある。
なお、欧州トヨタではC-HR、RAV4、ハイランダー、ランドクルーザープラドなどのSUVも扱うが、設計の新しさと価格の割安度で選ぶとヤリスクロスになる。日本で人気の高いカローラクロスも、欧州での販売を開始したが、地域によって状況が異なる。
イギリスなどでは、カローラクロスは売っていない。その代わりにC-HRがある。ヤリスクロスは両方の市場が扱って売れゆきを伸ばした。
■欧州で人気になったのはワケがある
そして欧州では環境基準が厳しいため、トヨタ車のラインナップは大半がハイブリッドだ。モーター駆動を使わない純粋なエンジン車は、GR86やGRスープラなど少数にかぎられる。
ヤリスクロスの二酸化炭素排出量はドイツ仕様の場合、101~117g/kmだ。同じくドイツ仕様のカローラクロスは113~127g/km、イギリス仕様のC-HRは119~128g/kmだから、ヤリスクロスは環境性能が優れている。燃料代も安い。
しかもヤリスクロスはボディがコンパクトだから、交通環境が過密な欧州市場との親和性も高く、幅広い地域で販売されることもあって高い人気を得た。
■剛性感をベースのヤリスから高めたのもポイント
このほか欧州では走行速度が高く、ヤリスクロスが安定性を向上させたことも人気を得た理由だ。開発者は「ヤリスクロスのボディは、ヤリスをベースにしながら剛性を高め、ステアリング周辺も高剛性化してサスペンションとの直結感を強めた」という。
例えば、高速道路を走行中に路上の落下物を避ける時など、ステアリング操作に対して車両の進行方向が忠実に変わらないと、挙動の変化が唐突に生じて不安定になってしまう。ヤリスクロスがコンパクトなSUVでありながら、走りを入念に高めて安全に配慮したことも欧州市場で好調に売られている理由だ。
以上のようにヤリスクロスは、欧州の安価なベーシックカーとして優れた機能を備え、外観もカッコよく新鮮なことから高い支持を得た。
日本における販売も好調で2022年のSUV1位はトヨタライズの1カ月平均6968台で、2位がヤリスクロスの6890台であった。ライズとは僅差で、日本国内でもトップ水準の売れゆきを保っている。
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