欧州自動車工業会は、欧州委員会が提案している次期排ガス規制「ユーロ7」を改めて批判した。独立機関の調査によると、規制適合に掛かるコストは欧州委の想定より4~10倍高くなるという。また燃料費などの間接コストを無視しており「ユーロ7は正当な手段ではない」とした。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
表/欧州自動車工業会(ACEA)
ユーロ7への反対が拡がる
欧州委員会(EC)が2022年11月に発表した「ユーロ7」次期排出ガス規制案は、小型車(乗用車・バン)と大型車(トラック・バス)の排ガス規制を一つにまとめ規制値を大幅に強化するとともに、ブレーキダストやタイヤかすなど粉じんの排出にも規制を設けるなど非常に厳しいものだった。
欧州自動車工業会(ACEA)は当初からこの提案に対する懸念を表明していたが、2023年5月23日、ユーロ7適合車の製造コスト増加分は、ECの想定より4~10倍高くなるという独立系調査会社による試算を公表し、改めて次期排ガス規制案を批判した。
ガソリンエンジンの乗用車・バンでは、ECが1台当たり184ユーロ(約2.8万円)のコスト増としているのに対し、業界団体であるACEAは1862ユーロ(約28万円)と、10倍以上のコスト増になると試算した。
同じくディーゼルエンジンの乗用車・バンでは446ユーロ(6.7万円)の想定が2629ユーロ(40万円)と約5倍、ディーゼルエンジンの大型車(トラック・バス)では2765ユーロ(42万円)の想定が11707ユーロ(177万円))と約4倍になるとした。
いずれの車種においても開発投資額がECの想定より大幅に増えるという試算になっており、また、新たに導入されるブレーキからの排出への対応にも大きなコストがかかる。この試算には新しく必要となる装置の価格や開発費など、製造に関係する直接コストのみが含まれている。
製造コストの増加分は製品価格にそのまま反映されるわけではなく、消費者が支払う価格は、通常はこれより多くなる。排ガス規制の対応により小型車で数十万円~大型車で数百万円という価格アップとなれば、消費者にとってインパクトが大きい。
小型車は2025年7月、大型車は2027年7月からの適用開始を目指しているユーロ7は、事実上、内燃機関の禁止に近い内容となる。バッテリーEVへの移行を促すとともに、域外メーカー(特に中国メーカー)に対する参入障壁を設けるという目的もあると思われるが、消費者にあまりに多くの負担を強いるのであれば反対する声も強くなる。
実際、報道によると欧州の8か国(チェコ、ブルガリア、フランス、ハンガリー、イタリア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア)がユーロ7提案に反対している。