ユーロ7による排出削減効果は限定的?
いっぽう、ECによる評価では考慮されなかったのが燃料費などの間接コストだ。
一般的にエンジンの排ガス規制が主なターゲットとするNOx(窒素酸化物)排出量は、燃費との間にトレードオフの関係が存在し、NOxを抑制すると燃費が悪化するため燃料消費量が増える。また排ガス浄化装置の触媒温度を上げるためにも燃料が使われる。
ACEAはこうしたユーロ7による燃料コストの増加分(車両寿命全体のライフタイムコスト)を3.5%と試算した。これは小型車では650ユーロ(9.8万円)程度となるが、走行距離の長い長距離輸送用大型トラックでは2万ユーロ(300万円)に達する。
直接コストと合わせると、大型トラックのライフタイムコストはユーロ7により500万円ほど増える計算だ。
車種によっては直接コストより間接コストの影響が大きくなるが、ECはこれを無視しており、消費者・事業者に選択肢が与えられていない点をACEAは問題視している。
また、別の調査ではユーロ7による排出ガス削減効果が限定的であるという指摘もある。
現行のユーロ6/VI規制(ユーロ7で統合されるまで乗用車用はアラビア数字、商用車用はローマ数字で表す)により、汚染物質の排出の多い旧型車を最新の車両に置き換えていくだけで2035年までにNOxの80%削減が可能だ。
これに対し、消費者に莫大なコスト負担を強制した上でユーロ7への移行を進めたとしても、それによるNOx排出削減量の上乗せ分は、乗用車で+4%、トラックでは+2%に過ぎない。
ACEAは環境インパクトの低減と導入によるコストの増加を比較した上で次のようにコメントし、改めてユーロ7を批判した。
「欧州の自動車業界は更なる排出削減にコミットしています。しかしながらユーロ7はそのための正しい手段ではありません。なぜなら、コストが極端に増えるいっぽうで、環境への影響を低減する効果は極端に低いからです」。
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