高速道路料金の考え方
もともと深夜割引の制度設計は、料金所の通過時刻が1分1秒違っただけで、時には1万円もの差が付くという無理があった。これでは料金所で待つ行為が発生しても当然だ。
しかし、道路が空いている時間帯に料金を下げるというのは理にかなっている。他の観光業や交通機関(ホテル、テーマパーク、鉄道、飛行機)でも、ハイシーズンには高く、オフシーズンには安いというのが常識だ。
では、段階的な割引率を設けたらどうだろうか。例えば、以前にも行なわれていたことがある「22~24時、0~6時は2割引」のように、段階的に割り引く。道路は夜8時にもなれば空いている。「20~24時」にしてもよい。
「実走行分だけ」とすると、どうしても深夜に無理をして割引を受けようとする人が出て来て、世の中が殺伐としてしまう。
以前に「1000円高速」や「深夜割引5割」という時代もあったが、フェリーの衰退にもつながった。あまり恣意的に料金をいじると鉄道やフェリーとのバランスが保てなくなり、「逆モーダル」や「二酸化炭素排出増」の現象が生じる。
また、トレーラ化が進んでいる昨今だが、特大車料金=2.75倍という、何十年も続いているバカ高い倍率は見直すべき時期ではないだろうか。
トラック事業者の多くは「大口多頻度割引」により、利用額の4~5割引という大きな割引を受けており、深夜割引と併用すれば普通車の正規料金より安い。
一般利用者についても同様に、利用総額が大きくなるほどマイレージ還元率をアップする制度が必要なのではないだろうか。
月60時間超の残業代割増となる「2023年問題」
次に「2023年問題」についてである。働き方改革、いわゆる「2024年問題」(年960時間残業規制)の前段階として、今年4月1日から月60時間超の時間外労働の割増賃金率の引き上げ(25%→50%)が中小企業にも適用された(猶予措置の終了)。深夜(25%増し)に60時間超の時間外(50%増し)ならば、75%の割増となる。
ドライバーには嬉しい話だが、ドライバーの給与体系では「時給」の概念が希薄で、どうなるか今もって実感がない。
全日本トラック協会の試算によると、時給換算1800円のドライバーが、1日平均拘束時間約12.5時間で働く場合、給与総額は47万6100円から48万2400円に6300円アップし、1.3%の賃上げに相当する。
しかし運送会社にとって、原資が無いのに賃金だけを上げるというのは、「厳しい」を通り越して「怒るべき」改正だ。
運送大手の佐川急便、ヤマト運輸、福山通運は制度改正目前の1月末から2月に相次いで、4月から運賃を平均で約8~10%値上げすると発表した。
運賃が上がらなければ、残業代の増額分は捻出できないし、大手がまず上げなければ、中小が単独で運賃を上げることはほとんどできないので、よい動きだったと思う。
食料品の値段はポンポン上がるのに、トラックの運賃は簡単に上げられない。それはなぜか?
食料品などの一般的な物価は相手が個人の顧客であるのに対して、運賃は、宅配便などを別にすれば、企業相手である。サービスの納入先は企業。つまり立場的には「下請け」の構造なのである。
もし、荷主や元請けが善人ばかりなら「お宅も物価高騰や賃上げで苦しいだろうから4月から運賃上げますよ」となるが、そうは行かない。
下請けいじめも存在するだろう。運送会社の営業担当は値上げには苦労する。そこで、運送会社の頼みの綱は、さまざまな補助金や高速道路料金の割引ということになるのである。
せっかく最後まで読んで頂いても、「逆風の対策になるアイデア」は何も見出だせないが、「運賃アップの裏付けも無しにお上が制度をあれこれ変えるのは良くない」ということだけは確かだろう。