負けたらマジでヤバい!!? トヨタの水素戦略が国内製造業の未来を守る

■「月産1万基超え」で収益は劇的に好転

ダイムラートラックとの提携で、大型商用車用水素エネルギーの開発が進むことが期待できる
ダイムラートラックとの提携で、大型商用車用水素エネルギーの開発が進むことが期待できる

 ワークショップでは、水素を「つくる・はこぶ・ためる・つかう」の多数の技術開発が発表されています。

 目玉は、2026年に商用車にフォーカスした第3世代燃料電池システムを導入することです。

 ディーゼルエンジン車よりもメンテナンスが大幅に容易で、コストを半減し、航続距離を20%引き上げます。

 S耐(スーパー耐久レース)で実証している水素のツイン(ふた口)充填の規格を普及させ、軽油充填と同じ10分を目指します。

 大型商用タンクでは、世界のタンク規格の統一を進め製造コストの25%低減を目指します。欧州と日本の水素タンクの設計概念・規格には類似性があり、ここではダイムラーとの提携効果が期待できそうです。

 大型商用車向けの液体水素タンクにもチャレンジします。液体水素は容積効率が向上し荷物の積載量を高めることが可能となります。ここでもS耐で実証が始まった液体水素カローラの成果が発揮できるわけです。

 マルチ水素タンクの開発も進め、さまざまなタイプの車両に対応でき搭載性を高めた、例えばバッテリーEVの電池を水素タンクに置き替えられるような形状にもチャレンジします。

 これは、将来的にガソリンやバッテリーEVの乗用車を燃料電池車や水素エンジン車に転換することを可能とする技術となります。

 月産1万基を超えると燃料電池は劇的に収益性が好転し、事業の可能性が大きく向上します。

 2030年の10万台のトヨタへのオファーはその変曲点に限りなく接近します。37%の原価低減が実現し、水素ビジネスの本格拡大期が訪れることを意味します。

 20万台へ到達すれば同50%の原価低減が可能となるようで、水素社会の構築とモビリティ分野での水素利用に弾みがつくでしょう。その先の燃料電池や水素エンジン乗用車への希望へもつながるわけです。

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●中西孝樹(なかにしたかき):オレゴン大学卒。1994年より自動車産業調査に従事し、国内外多数の経済誌で人気アナリスト1位を獲得。著書多数

【画像ギャラリー】水素エンジンでル・マンに挑戦!? 6月に発表されたレースカー「GR Hydrogen concept race car」(7枚)画像ギャラリー

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