新型アルファードも「ナット式」 なぜ日本車はドイツで主流の「ボルト固定式」が少ないのか

ドイツメーカーがボルト固定式なのは、さまざまな面で都合がいいから

 では、なぜドイツメーカーではホイール固定が面倒なボルト固定式を使い続けるのでしょうか。ひとつは日本と同じで、M14のラグボルトを長年使い続けたことで業界スタンダードとして根付いていることが考えられます。修理パーツも含めてこのサイズで統一されていますので、いまさら変えるのも、というのがあるのでしょう。

 また、ナット固定式だと、ハブ+ボルト、ボルト+ナットの2か所で締結されるのに対し、ボルト固定式はハブとボルトの1か所と、少ない部品で締結しているほうが都合がいいということも考えられます。このように、強度や剛性が同じだとしても、設計検討のしやすさや、故障した際の交換部品の種類が少なくて済むこと、低コストで済むなどの理由で、ドイツメーカーではボルト固定式を採用しているのでしょう。工業製品の構造として賢い設計だといえるのではないでしょうか。

 なお、クラウンクロスオーバーやレクサスIS、NX、RXは、ドイツ車と同じM14のラグボルト(長さや頭の形状は異なる)を採用していますが、冒頭でナット固定式を採用したとした新型アルファード/ヴェルファイアもM14サイズでのナット固定式です(先代はM12ボルトだった)。やはり剛性を高めたいならば、ボルト固定でなくとも、ナットのサイズをM14にすればよいのです。また、「ランドクルーザー」や「センチュリー」、レクサスの「LS」「LC」「LX」、ホンダの「シビックタイプR」、日産「GT-R NISMO」なども、M14サイズのナット固定式となっているようです。

ISがレクサスで初採用したボルト固定式。ホイールの規定トルクはM12ナット固定時代の103N·m(10.5kgf·m)から、M14のラグボルト固定で140N·m(14.3kgf·m)まで、約36%も増えた
ISがレクサスで初採用したボルト固定式。ホイールの規定トルクはM12ナット固定時代の103N·m(10.5kgf·m)から、M14のラグボルト固定で140N·m(14.3kgf·m)まで、約36%も増えた

治具さえあれば、ボルト固定式の作業性は、それほど悪くはない

 ボルト固定式のネックであるホイール取り付けの手間も、ハブ側へ10cmほどのスチール棒をガイドとして差し込み、その上からホイールを通してはめ込む「ホイールセッティングボルト」があれば、さほど苦労はしません。筆者もひとつ持っていますが、あるのとないのとでは、時間と疲れ方が全く違います。

 もちろんナット固定式のほうが、ホイールセッティングボルトを装着して、取り外す手間がないぶん早く終わりますが、ボルト固定式のドイツ車に乗っている方には活用していただきたいアイテムです。

ホイールセッティングボルトがあれば、ホイール固定作業は劇的に楽にできる(PHOTO:Adobe Stock_sugiwork)
ホイールセッティングボルトがあれば、ホイール固定作業は劇的に楽にできる(PHOTO:Adobe Stock_sugiwork)
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