■中国市場の潮流に乗り遅れた日本車
好調な欧・米・日市場に対し、深刻な停滞が見えているのは中国市場となります。
4~6月期の日本車メーカーの中国工場出荷台数は前年比23%減と落ち込み、市場シェアは15%にまで落ち込みました。ピークの2020年が24%であったわけで、近年の凋落は著しいものがあるのです。
トヨタの中国連結子会社の営業利益と、中国合弁企業の持ち分法利益の合計利益は前年4~6月期の1518億円から1079億円へ、約3割の減益となっています。
ホンダの持ち分法利益に含まれる中国合弁会社利益は200億円に落ち込んでおり、好調時には四半期で500億~600億円を稼いでいただけに、半減以下に落ち込んでいます。
日産はもっと厳しく、今回の1Q決算に連結された1~3月期の中国からの比例連結営業利益は収支トントンへ落ち込み、前年同期の340億円から激減しているのです。
中国における日本車の惨状の背景には大きく2つの理由があります。
第1に、日本車が提供してきた低燃費、経済性、高品質という価値が中国ユーザーに届かなくなってきています。
第2に、新エネルギー車(NEVと呼ばれEVとプラグインハイブリッドが含まれる)が中国の主力市場に成長し、激しい価格競争に日本車も飲みこまれているのです。
2020年には132万台に過ぎなかったNEV市場は、2022年に655万台に達しており、2023年は850万台、市場全体の35%を占める公算です。
NEVが提供する電気による走行体験、安い維持コスト、NEVならではのデジタルな提供価値が気に入られ、消費者がNEVを求めています。
■中国での生き残りをかけた戦いへ
NEV市場は、まずはテスラが高級車市場の拡大に火をつけ、そこにNIO(蔚来汽車)のような新興企業が大量に生まれました。
低価格帯で50万円からでも購入可能な上汽通用五菱汽車の「宏光MINI EV」が2020年以降、低価格EVの市場を切り拓きました。
それでも10万~20万元(200万~400万円)の価格帯にある大衆車市場はエンジン車の独壇場でしたが、その市場でひとり勝ちしているのがBYDなのです。
現在、多くの中国地場や新興企業がこの大衆車NEV市場に雪崩を打っての参入が続いています。
例えば、BYDのプラグインハイブリッド車の「秦プラス」は10万元を切り、EVの「ドルフィン(海豚)」は12万元を切ります。
ガソリン車のトヨタカローラよりも安く購入でき、10%の購置税(消費税)を免除され、燃費コストは10分の1で済むわけですから、NEVを買わない理由がないのです。
さらに、近年の中国消費者はスマートフォンのような顧客体験を提供できる、ソフトウェアディファインドビークル(SDV)としてNEVを選好する傾向が顕著となっています。また、自動運転機能に対する要求も強まっています。
ポストコロナの大潮流として、中国市場においてはクルマのデジタル化が大衆車市場で急激に進んでおり、日本車に限らずグローバルメーカーはこの潮流に乗り遅れているのです。
世界とまったく違うペースで中国NEVがSDVとして独自の進化を始め、世界の先頭に立って今後も進化を加速させるでしょう。
この結果、グローバルモデルを開発し、それを中国合弁企業に移植するというビジネスモデルは崩壊しました。
グローバルモデルとは別に、日本車メーカーは中国パートナーの技術を用いて中国専用NEV/SDVを開発・現地製造することが求められます。
これができなければ、その先には中国地場メーカーのNEV/SDVが攻め込む東南アジアや新興国での敗戦の連鎖が待っているわけです。
是が非でもそれを避けなければ日本車の未来が封じ込まれてしまいます。中国事業は当面、利益よりも競争力挽回に注力しなければなりません。
●中西孝樹(なかにしたかき):オレゴン大学卒。1994年より自動車産業調査に従事し、国内外多数の経済誌で人気アナリスト1位を獲得。著書多数
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コメント
コメントの使い方中国で日本メーカーのクルマが売れなくなったからって気にすること一切なし!むしろ関係を絶ったって構わない。
この間遂に人口世界一の座をインドに明け渡してしまったし、今いろんな意味で世界的に孤立してるし、デカい顔してられず大きな口叩いていられない立場にある。
とにかくもう、あとはインドと仲良くしておけば中国無視しても安泰よ〜〜!
現行経済学の[中国に工場建てない&中国で経済活動しない]の鉄則には、中国市場を主たるマーケットにしない、も含まれます。
ハイリスクなのを承知で進出したなら、今回の件のように梯子外されたとき、政府(国民の税金)に泣きつかずに自分で責任取り切ることが必須。
これからも、いつ理不尽に締め出されるか分からない中国市場。そこで刹那売れたたところで長期的な成長はありえません。それどころか負債にすらなりえる