中古車販売大手「ビッグモーター」で行われていた数々の不正行為。クルマ好きにとっては鳥肌が立つような事件だが、はたしてこれは、ビッグモーターだけの問題なのだろうか。
※本稿は2023年8月のものです
※当企画の原稿は、2023年7月20日に作成されたものです
文/萩原文博、写真/ビッグモーター、AdobeStock
初出:『ベストカー』2023年9月10日号
■「血」を流して積み上げた成果を台無しに!!
筆者は約30年前に中古車情報誌の編集部にアルバイトとして加入し、その後18年間、編集部員として記事制作に参加していた。
その後2年間は中古車情報誌での経験を買われて、辛口のスクープ誌の編集に携わり、中古車業界のさまざまな事件の記事を執筆した。
そんな自分からすると、現在話題となっている大手中古車販売店「ビッグモーター」の事案は、昭和から平成初期に横行していたことのようで、「まだこんなことやっている販売店があるのか」ということと、急成長の裏には「やはりこのようなことをやっていたのか……」という感覚が強い。
約18年間中古車情報誌の編集部に属していたが、平成初期の中古車業界は現在と比べると比較にならないほど「ダーク」だった。
走行距離メーター巻き戻しや修復歴車を修復歴ナシとして販売することをはじめ、同じクルマの写真を使用した非現車のオトリ広告など当たり前のように行われていたのだ。
誰もが中古車を安心して購入できるようにと、中古車業界はオークションでの走行距離管理システムの導入、中古車メディアでは車体番号表示の掲載を実施。
しかし中古車の車体番号表示によって広告出稿が激減し、情報誌がペラッペラッになってしまったのだ。
そういう大量の「血」を流してでも、ユーザーが中古車を安心して購入できるようにしたい。たとえ自分たちの売上が落ちたとしてもこの車体番号表示は成功させるという、当時のスタッフの思いは強かった。
だからユーザーだけでなく販売店にも理解され、現在では車体番号表示は当然のこととなり、中古車業界の信頼性も少しずつ向上し、クリーン化が進んでいった……と、思っていた。
今回のビッグモーターの事案は、せっかく先人たちが築き上げクリーンになりつつあった中古車業界の信頼を崩す事例である。
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