ガラス張りのショールームでまばゆい光を放つ展示車両。一体どうやってお店の中に入ったのか、疑問に思う人は少なくないと思う。展示車両の搬入方法や入れ替え方法とは、展示されているクルマはどこへ行くのか。普段何気なく目にしている、ディーラーの展示車両にフォーカスしていく。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA、マツダ、Adobe Stock
■展示車の搬入や入れ替えはどうやっているのか?
ショールームに整然と並ぶ新型モデルの展示車両。このクルマたちは私たちが普段使っているマイカーと何ら変わりのないものだ。ナンバープレートを付ければ公道を走れるクルマであり、展示目的で作られたものではない。
自動車ディーラーに配車される新車の中から選ばれた1台が、ショールームで輝く存在になっているのだ。
ただ、こんなに大きなものをどうやって中へ入れているのか気になる。出入口はクルマが通れるほど大きくないし、裏口のようなものも見当たらないはずだ。しかしながら、展示車両たちは、紛れもなく自走して、展示位置にたどり着いている。
多くの自動車ディーラーは、ガラス張りのショールームだ。そのうち人が通れる出入口がいくつかあるが、そのなかに自動ドアの二重扉になっている箇所がある。そこが、展示車両の搬入口だ。
この自動ドアは、手動に切り替えると動かなかったガラス戸の部分が折り畳まれるように開く。その様子はジャバラカーテンのようだ。
また、ショールームの2階にクルマが展示してあるお店では、見えないところに車両用のエレベーターが用意されており、クルマを搬入できるようになっている。
ショールームに並ぶクルマは、そのお店のスタッフによって並べられていることがほとんどだ。営業終了後に、ショールーム内の狭い道を縫うように走り、たどり着いた場所で展示車としての使命を全うする。
■新車発表前の準備も! 展示車の搬入はディーラーマンにとって大切であり超重労働
近年では新型車の発表日に、ディーラーへ展示車両が届くことが少なくなってしまった。
しかし、ほんの数年前までは、新車発表日に合わせて多くのディーラーに新車が届き、大急ぎで展示準備をするということが当たり前だった。
届いた展示車を、まずはしっかりと洗う。ボディの汚れはもちろんだが、タイヤや下回りなども丁寧に洗わなければならない。ショールームに砂などの汚れを持ち込まないためだ。
洗車を終えたクルマは、丁寧に拭きあげられる。ショールーム内は水分厳禁のため、細部に残る水滴も、エアーツールで吹き飛ばす。
お店が閉店したら搬入が始まる。展示車のエンジンをかけ、慎重に決められた場所まで動かしていく。運転者1人、前方・後方の障害物を見ながら誘導する人が2人ほど必要な作業だ。
移動が終わったら、展示車両のバッテリーを外し、「電導師」と呼ばれる店舗のコンセントから車両電源が取れる部品を取り付ける。これでバッテリーあがりを起こすことなく、展示車両のメーターパネルの作動や、ライトONが可能になるのだ。
仕上げの拭き上げを行い、タイヤワックスをかけ、価格表を取り付ける。発表前の車両では、この上から布をかけておき、発表当日の定刻に除幕セレモニーを行う。
1台を入れるのに1時間以上かかる大掛かりな作業だが、ディーラー営業マンにとっては、商売道具を新調する大切な仕事の一つだ。
コメント
コメントの使い方40年くらい前の話ですが、ショールーム展示でプジョーですが車両下にダンボールを敷かないとオイルやATFが垂れて困る車両がありました。カッコワルイですがショールームのタイルがフルードで溶けてしまい、やむおえずでした。知り合いのワーゲンのメカに聞いたら「うちはATF抜いてから展示してるw」とやはり苦労してましたね。当時の品質なのてそんなものでした。
欧州車なんて今も大して変わらんでしょ