日産 フィガロ なぜ“第二弾”なかった!?? 偉大な生産終了車

日産 フィガロ なぜ“第二弾”なかった!?? 偉大な生産終了車

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産フィガロ(1991-1992)をご紹介します。

文:伊達軍曹/写真:NISSAN、ベストカー編集部


■古き良き味わい 購入希望車殺到の4シーターオープン

 会社本体の大幅リストラと同時に軽い気持ちで作ってみたらなぜか大ヒット作になってしまったが、最初から「期間限定のお付き合いということでよろしくね」と決まっていたため、約束どおり1代限りで生産終了となった車。

 それが、1991年から1992年まで販売された日産フィガロです。

外観。クロームメッキが多用されていた。エンジンはマーチに積まれている1Lの直列4気筒SOHC。ターボを装着していた

 フィガロは、日産が1980年代後半にスタートさせた「パイクカーシリーズ」の第3弾。パイク(pike)というのは「槍(やり)」や「尖峰」といった意味を持つ英語です。

 要するに日産の「パイクカーシリーズ」とは、初代マーチのシャーシを使って作られた、エッジが利いたデザインの車でした。

 そしてその尖ったデザインを「槍・尖峰」に見立て、世の中の動きや嗜好を探ってみた――というのが、1987年のBe-1と89年のパオ、そして91年に登場したこちらフィガロを含む「日産のパイクカー」だったといえます。

 フィガロのボディタイプは見てのとおりのクラシカルな4座オープン方式。ルーフは一見ハードトップにも見えますが、手動での開閉が可能です。

 インテリアもミッドセンチュリーの英国車を思わせるステキな意匠で、スイッチ類やメーター回りにはしゃれたメッキが加わるなど、そのスペシャル感は満点でした。

 初代パイクカーであるBe-1と2代目のパオは自然吸気の1L直4エンジンを搭載しましたが、こちらフィガロは同じ1L直4ながらターボチャージャー付きで、その最高出力は76ps。

 もちろんめちゃくちゃ速いわけではありませんでしたが、まずまず活発な走りを堪能できる車だったのです。

 限定2万台で発売されたフィガロに対し、最初の1カ月で21万件もの応募が集まるほどの大人気となったのですが、当初の予定どおりの台数を売り切った1992年中、惜しまれながら販売終了となりました。

■生産終了は予定通り…しかしほかにも理由があった?

ホワイトで統一された内装が一際目を引いた

 日産フィガロが販売終了となった理由。それは「最初から2万台の限定車という計画だったから」であり、基本的にはそれ以上でも以下でもありません。

 しかし考えたいのは「ではなぜ、第2のフィガロは登場しなかったのか?」ということです。

 登場時はあれだけ注目を集め、今なお中古車は熱心に販売され続け、そして英国でも一部で大々々人気を博しているのですから(海外のフィガロ熱はかなりのモノなんですよ。例えば https://www.figaroownersclub.com とか)、 その後の新しい技術を使った「2代目フィガロ」がどこかのタイミングで登場しても不思議はなかったはず。

 そうならなかった理由のひとつは「バブルの崩壊」でしょう。

 日産のパイクカーというのはバブルに浮かれて……というかバブル景気で余裕があったからこそ実現できたプロジェクトでした。そのバブルが逝ってしまったため、「お遊び」をするだけの余裕がなくなったわけです。

 そしてもうひとつの理由は――これは単なる私見になりますが――自動車メーカーと、車を買うユーザーのマインドの間にけっこうな「乖離」があるからなのでしょう。

 語弊や誤解をおそれずに言ってしまえば、車というのは「フィガロみたいな感じ」でもいいんです。つまりステキなデザインで、まあまあよく走る車でさえあれば、買う人は勝手に買っていきます。勝手に盛り上がります。

 しかし自動車メーカーというのは、そのように物事を簡単に考えるわけにはいきません。

 そのためいろいろと電子制御を付け加えたり、フロントマスクをいかつい感じに変えたりしながら「もっともっとイイ車を作らなきゃ! フィガロみたいな(ある意味)カンタンな車を作るわけにはいかないよ!」と考えているのでしょう。

 そのように作られた新型車があっという間に不人気のため廃番になったりするいっぽう、なんの変哲もないメカニズムの、ただただ「ステキなデザイン」というだけの日産フィガロが時を超え、そして国境も越えて愛され続けているというのは、なんとも皮肉な話です。

1989年 第28回東京モーターショーの様子から
1989年 第28回東京モーターショーの様子から

■日産 フィガロ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3740mm×1630mm×1365mm
・ホイールベース:2300mm
・車重:810kg
・エンジン:直列4気筒SOHCターボ、987cc
・最高出力:76ps/6000rpm
・最大トルク:10.8kgm/4400rpm
・燃費:13.6km/L(10・15モード)
・価格:187万円(1991年式フィガロ)

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