2019年4月24日、三菱がパジェロの国内向けモデルを8月いっぱいで生産終了すると発表。一世を風靡した“クロカン”が37年の歴史に幕を下ろす。
いっぽう、直後の4月27日に日産のパトロール NISMOが、スーパーGTのレスキュー車両として導入される。そんな発表もあった。
パトロールといえば、日産を代表する大型SUVだった「サファリ」の海外販売名。国内向けは2007年に生産終了となったものの、いまも海外では“現役”だ。冒頭のパジェロも海外では今後も販売が継続される。
パジェロとサファリ。――かつて三菱と日産を代表するモデルだった両車は、なぜ日本で生き残ることができなかったのか。似た立ち位置ながら国内でいまも堅調に売れるトヨタ ランドクルーザーと比較すると、その理由の一端が見えてくる。
文:永田恵一
写真:NISSAN、MITSUBISHI、編集部
サファリ後継「パトロールNISMO」は400馬力超のモンスターSUV
現行パトロールは、2010年にランドクルーザーなどに相当するラダーフレームを持つ本格ラージSUVとして登場。
巨大なボディを生かした3列シートを持つ8人乗りのSUVで5.6L・V8エンジンを搭載する点や高級車のようなインテリアを持つことなど、ランドクルーザーに非常に似た車である。
2015年に中東向けパトロールに追加されたNISMOは、エンジンをパワーアップ(400馬力から428馬力)し、ビルシュタインダンパーを使った専用サスペンションなどを装備。
このほか、レイズ製22インチホイールによる足回りの強化、ボディ剛性の向上、エアロパーツの装着による空力性能の向上、シートなどのインテリアの変更といった日本で販売されるNISMOロードカーと同様のチューニングが施されている。
ちなみにスーパーGTのFROカー=レスキュー車両とは、コース上でアクシデントが起きた際にドクターとオフィシャルが同乗し現場に真っ先に駆け付けるオフィシャルカーである。
そのため素早く現場に行ける速さ、機材が積める積載性、アクシデントに遭った車両を移動できる牽引力が要求される。
現在はランドクルーザープラド、レガシィアウトバック(3.6Lフラット6を搭載する豪州仕様)、ポルシェ マカンターボが使われており、日産も絶版となっているスカイラインクロスオーバーを提供していた。
その後継車がパトロールNISMOで、FROカーに求められる条件を見るとパトロールNISMOは相応しいことがよくわかる。
パジェロとサファリ 海外ではどのように展開?
海外向けのパジェロは、日本で生産されており、南アフリカなどのアフリカ、中国やフィリピンなどのアジア、ロシア、ブラジルなどの南米、UAEやサウジアラビアなどの中東、オーストラリアやニュージーランドといったオセアニア地区で販売。
仕向地によっては日本向けのパジェロでは廃止された3ドアや3.8L・V6エンジンも設定される。
そして、2006年登場とモデルが古い現行パジェロより、世界的に中心となっているのがパジェロスポーツだ。
2015年登場のパジェロスポーツは、タイなどの海外で生産され、日本のランドクルーザープラドに相当する3列シートも設定する持つ本格SUVだ。
高級感ある内外装を持ち、8速ATと組み合わされる2.4L直4ディーゼルや3L・V6ガソリン(エンジンは仕向地によって異なる)を搭載するなど現代的なSUVで、内容を見ると販売が好調なのもよくわかる。
いっぽう現行パトロールも、日本で生産され中東を中心に、北米(車名はアルマーダ)、オセアニアといった国土の広い地域で販売される。
パワートレーンは、7速ATと組み合わされる5.6L・V8エンジンを搭載。こちらは直噴で出力調整をスロットルバルブでなく吸気バルブのリフト量で行うVVELを使うなど、なかなか進んだエンジンだ。
また、北米向けには2WD、中東向けには4L・V6も設定されるなど、なかなか芸が細かい。さらに、パトロールをベースにしたランドクルーザーに対するレクサス LXのような存在となるインフィニティ QX80も世界各国で販売されている。
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